時代の流れも校歌も変化
そもそも、校歌はどのように、そしてどのくらいの期間で作られるのか?
「公立校の場合は、教育委員会から依頼が来ます。最近だと学校が統合したとか、開校何十周年の記念に新しく校歌をつくりたいとかそういったご依頼が多いですね。おもしろいケースだと、現在の校歌はいきなり歌が始まって歌いづらいからイントロだけ考えてほしいなんてご依頼もあります。
依頼を受けると、まず校歌に使いたいキーワードをその地域の市民や学校の生徒に公募。それをもとに、作詞家が歌詞をつくる。その歌詞を、教育委員会のメンバーなどで構成される校歌制作委員会が確認し、曲をつけ、3ヶ月ほどで校歌が完成します」
また、校歌に使われるフレーズにも流行りすたりがあるのだとか。
「20年くらい前までは、校歌は大人が子どもに与えるものだったんです。でも、最近は、子どもが歌いたい歌を大人が代わりにつくるという考え方に変わりました。
歌詞を公募したりして子どもたちの声を反映するし、これまでは『我らいざ行かん』みたいな文語体が多かったけれど、最近は口語体が多い。子どもたちがわかりやすいように四字熟語とかも減ってきてますね」
ポップスを見ても最近は楽曲時間が短いのがトレンドだが、それは校歌も例外ではない。
「校歌は通常3番までつくりますが、最近は2番のあとにもう1回サビを繰り返す『ツーハーフ』というスタイルも増えてきました。式典の中で、3番まである長い歌だと子どもたちが飽きてしまって。時代ですかね(笑)。最初は驚きましたが、短くすることで盛り上がる効果もあるので、どちらにもよさがあると思います」
歌詞だけでなく、曲調も子どもたちが歌いやすいものに変化している。以前はマーチ調が主流だったが、最近では8ビートのような軽快なリズムのほうが子どもたちに好まれるそうだ。
このように、時代とともに変化している校歌のあり方だが、それでも作り手の思いは変わらない。
「作詞家、作曲家にとっても、校歌をつくれるのは名誉なこと。自分の肉体が滅びても、校歌は、ひとつの学校の歴史としてずっと歌い続けられる。だからこそ責任は重いし、1曲1曲妥協できない気持ちがあります。
校歌って、友達と喧嘩したり、挫折したり、いろんなことがあったときに子どもたちを鼓舞できる存在だったらいいなと思っていて。ふと口ずさんで懐かしく思うのもいいし、学生時代にがんばっていた気持ちや友達の顔を思い出すきっかけになるかもしれない。そういう“応援歌”を作りつづけたいなと思います」
歌えばそれぞれの青春に思いがめぐり、甘酸っぱくノスタルジックな気分になる。校歌の歌詞や「ああ」のフレーズには、そんな不思議な力が宿っているのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班