現場の気持ちがわかるからこそ、喜ばれるお弁当が作れる
「ネコメシ。」を主宰する熊谷典子さん。お弁当やケータリングの仕事を始める前は、漫画家を志しながら、編集プロダクションで働いていたという。仕事の一環として撮影現場でスタッフやモデルが食べるお弁当を手配していたことを目の当たりにし、ならば自分でケータリングをやってみようと思ったのがきっかけだそうだ。
「元々料理は好きでしたが、自宅で友人達のために作る程度でした。仕事で撮影現場の”ロケ弁”の発注を担当する機会も多かったので、日常的にお弁当やケータリングに触れていたんです。そんなときにふと『自分でも作ってみたい』と思って始めたのですが、今思うとそれが転機でしたね。徐々に口コミで注文をいただくようになり……。元々凝り性だったので、コツコツと料理を作る『職人仕事』が性に合ったのかもしれないですね」
人気メニューの1つ、「季節のちらし寿司」のアイディアは、編集プロダクションで働いていたときの経験から思いついたそう。
酢飯の中に混ぜ込まれた、蓮根ときゅうりのシャキシャキ感が食感のアクセントになっている。季節ごとに変わる食材を楽しみにしていた業界人も多く、特に夏に人気があったのは、すだち。爽やかな香りと甘辛い穴子の組み合わせが食欲をそそる一品だ。
「撮影が続いて連日お弁当やおにぎりばかりで白いごはんが続くことが多いのを、編集プロダクションでの経験で知っていました。そんなとき『時々酢飯があると嬉しいよね』という声が現場で上がっていたのが印象に残っていたので、ちらし寿司を作ろうと思い立ちました。意識したのはお弁当箱の蓋を開けたときに、季節に合わせた食材の香りがフワッと立ちのぼること。そのために旬の食材を酢飯の上に敷き詰めています。春から夏にかけては、酢橘などの柑橘、秋は菊の花、冬はゆり根……という具合に季節によって具材を変えていました」
<季節のちらし寿司>
かやく・・・
ごぼう、こんにゃく、油揚げを3mm角に切り、正油と砂糖で薄く炊く。
甘酢漬けにした蓮根を3mm角に切る。
干し椎茸を戻し、正油と砂糖で甘辛く炊いた後、3mm角に切る。
穴子・・・
下処理をした穴子をザラメ、正油、酒で甘辛く炊く。
(ちらし寿司の作り方)
① きゅうりを薄切りにし、茹でて冷や水に取った後に固く絞る。
② 酢飯にかやくと胡麻、薄切りにしたきゅうり、2cm角に切ったアナゴ、刻んだ山椒の葉を混ぜる。
③ ②を笹を敷いた容器に詰め、スライスした酢橘を敷き詰める。