物価上昇に、
賃金や金利が追いつかない
物価が上昇する中、最近は給料を引き上げるというニュースもよく目にします。物価上昇と同じくらい賃金がアップすれば、日々の生活にはあまり影響はないかもしれません。
しかし、たとえば賃金が3%上がったとしても、物価が5%上昇すれば、実質的には賃金が下がることになります。
では、実際はどうでしょか?
図8は、実際に受け取る金額を表す「名目賃金」から物価変動の影響を差し引いて算出する「実質賃金」がどのように推移しているのかを示したものです。
このグラフを見ていただくとわかるとおり、残念ながら賃金上昇はインフレにまったく追いついておらず、実質賃金は下落が続いています。
先ほどご説明したように、いまは人手不足ですから、今後は賃金を上げざるを得なくなる企業が増えてくると考えられます。
いずれは実質賃金がプラスになることもあるかもしれません。しかし、大企業はそれなりに賃金を引き上げることができても、中小企業の中にはなかなか賃上げに踏み切れないところも多いのではないかと思います。
「自分の勤務先では賃上げは望めない」と感じるのであれば、物価上昇の影響をもろに受けることになりますから、今後のマネープランについてはいままで以上に真剣に考える必要があります。
もう1つ、物価上昇にともなって注目したいのが、金利の動向です。
インフレになると預貯金の価値が下がるとご説明しましたが、もしインフレに負けないくらい預金金利がつくなら、資産の価値は守られることになります。
これも実際にどのような状況になっているのか、データを見てみましょう(図9)。
金利の基準となる「10年国債の利回り」から「物価上昇率(消費者物価指数)」を差し引いた「実質金利」の推移を見ると、近年はほぼマイナスで推移していることがわかります。
つまり、いま現在も私たちの預貯金の価値は目減りしているということです。