積み立てるべきは株式ファンド
「具体的にどうお金を守り増やすのか」についてご紹介したいと思います。
新NISAを活用して積み立てをしていく投信は、すべて株式ファンドにします。なぜならば、新NISAのメリットは「運用益が非課税になる」ことだからです。
このメリットを最大化させようと考えれば、運用益が大きくなると期待できるハイリスク・ハイリターンの資産クラス、つまり株式ファンドに投資すべきということになります。
数字で考えてみましょう。仮にみなさんが新NISAで100万円を投資したとして、1%のリターンなら運用益は1万円、8%のリターンなら運用益は8万円になります。
非課税になる金額は、1%のリターンの場合は約2000円ですが、8%のリターンの場合は約1万6000円となります。
こうして計算してみると、「運用利回りが高いほうが、非課税メリットが大きい」ということがよくわかるでしょう。
ただし繰り返しになりますが、ハイリスク・ハイリターンの株式で運用するからには、リスクを抑えて運用することが必要です。
10年以上の長期で運用すること、積み立てで投資して時間分散をはかること、投資先となる国・地域なども分散することを守るという前提で、私は新NISAは株式ファンドの積み立てを選びます。
世界経済の成長を、
自分のものにできる
何度「リスクを抑えて運用すればよい」といわれても、ハイリスク・ハイリターンと聞くと、「やっぱりこわい」と思う方は多いと思います。
しかし私は、幅広く世界の株式に投資をすることは、私たちが取りうる、最も成功確率の高い運用方法だと思っています。
私自身、資産の大半を何らかの形で株式に投資していますが、その意味をよく知っているので、こわいと感じたことはありません。
こわくないということを腹に落とすには、「世界の株式に投資する意味」をしっかり理解しておくことが必要です。
図35をご覧ください。棒グラフが世界の名目GDPの推移、折れ線グラフは世界の株価の動きを示すMSCI全世界株価指数の推移です。
株価の推移を見ると、たしかに大きく下落している局面があります。1999〜2000年にネットバブルが崩壊したタイミング、2008年のリーマン・ショックのタイミングでは株価が大きく落ち込んだことが見て取れますし、最近では2020年のコロナ・ショックによる急落もありました。
しかしこうした時期があっても、その後、株価は必ず回復しています。グラフからは、「長期では、世界のGDPも株価も、右肩上がりに伸びてきた」ということがわかるでしょう。
なぜ、世界経済は成長を続けることができたのでしょうか?
それは図の中に示したように、世界経済を牽引する企業がずっと現れ続けてきたからです。ネットバブルがはじける前、アメリカではアマゾン・ドット・コムやイーベイ、ペイパル、グーグル(現アルファベット)、セールスフォース・ドットコムなどが次々に立ち上げられ、中国でもテンセントやアリババ、バイドゥなど、のちにメガテックと呼ばれる企業が誕生していました。
ネットバブル崩壊後には、テスラ、リンクトイン、フェイスブック(現メタ)、スポティファイなどが次々に登場しています。
リーマン・ショックの最中には、エアービーアンドビー、スラック、ウーバーなどが生まれ、その後もズーム・ビデオ・コミュニケーションズやラインの登場が続きました。こうしてみると、世界では人々が次々にイノベーションを起こし、先進的な企業が生まれ続けてきたことがよくわかります。
では、今後はどうでしょうか?
私は、これからも先進的な企業が生まれて世界経済は成長していくに違いないと思っています。AI、ブロックチェーン、IoT(Internet of Things /モノのインターネット)、メタバース、EV(電気自動車)、量子コンピューターなど、いままさに進化の真っ最中で、これから社会を大きく変えていくことがすでに見えている技術は枚挙にいとまがありませんし、その先にも期待の新技術が続々と生まれるだろうと想像します。
そして、そのような進化の中から、世界経済を牽引する次の企業が現れるでしょう。
もちろん、一時的な景気後退などで株価が下落する局面もあるはずですが、長期的に見れば、株価は今後も右肩上がりで伸びていくのではないかと思います。
世界の株式に分散して投資することは、このような世界経済の成長の果実を、自分のものにすることを意味します。
みなさんも、長期的な世界経済の成長を信じられるなら、その果実を得ようと手を伸ばしてみたほうがよいのではないでしょうか。
ちなみに、私が「10年以上の長期運用を」と話すと、「運用して10年目にちょうど景気後退になって株価が大きく下がっていたら、どうすればいいのか」と質問を受けることがあります。
もちろん「10年以上の長期運用」は、「10年経ったら運用を止めて売却する」ということではなく、11年、12年、13年、さらに20年、30年と運用してもよいわけです。
ですから、10年経ったところで、もし株価が低迷していたら、そのまま積み立てを続けることをおすすめします。
過去の景気後退の際も、株価は数年以内には戻っています。
せっかくなので、安く買える間に「量(口数)」を増やそうと考えて積み立てを続けていけば、少し株価が戻ったところで利益が出る可能性がぐっと高まります。
もちろん、運用10年目のタイミングで、まとまったお金が必要になることが確定しているのであれば、そのタイミングに向けて「すぐに使える現預金」を準備しておくことは必要です。
相場が急落したときに備えて、当座、必要なお金は、長期運用する分とは分けて管理しておくことがとても重要です。