「今日もお昼ごろ、家に向かって手を合わせてる方がいました」
12月中旬、田村一家が暮らしていた札幌市厚別区の自宅周辺はすっかり雪景色に変わっていた。事件直後はブルーシートに覆われ隠れていたガレージの様子も、今は見渡すことができる。ガレージの中には母親の浩子容疑者が趣味にしていたガーデニングの木々や草花が枯れた状態で残されていた。
近くに住む女性はこうため息をついた。
「事件後は田村さんの家に出入りする方は1人も見かけていないので、どなたか親族の方が掃除に来るとか手入れをしてるとか、そういうこともないと思います。規制線はつい最近までピンと張ってあったのですが、この間降った雪の重みで垂れ下がっちゃったんですね。今でも警察の方は定期的に様子を見に来たり、パトカーで見回りされていますよ」
家宅捜索も済み、家族全員が勾留されている今、人気のない民家をパトロールするのもおかしい気がするが、相応の理由があるらしい。
「田村さんのお宅が肝試しの名所みたいな感じになっているんですよ。最近は減りましたが、夜中に若い子たちが大人数で来てはワイワイ騒いで写真を撮ったりしていたことが続きましたから。お酒を飲んだ帰りとかに来ているみたいで、酔っ払って田村さんのお宅の前でたむろする人たちもいるので、ウチも防犯カメラを設置したぐらいですから。
田村さんのご一家は、娘さんは一度も見たことがありませんでしたが、ご夫婦は穏やかそうな方たちでした。私は事件の1週間前にも奥さまとはお会いして挨拶していたので、あの家の中であんな状態というか、遺体(切断された首)がある状態というか……。そういう事件があったのは今でも信じられないです」
別の80代の住民女性も不安そうな表情を見せた。
「奥さまがこまめに手入れしていたガーデニングの植物も枯れてしまいましたね。私も旭川にいたことがありまして、奥さまも旭川の美術館で学芸員をされていたこともあって、以前はよく話をしたものです。まぁ、あれだけ特殊な事件だったというのもあるのでしょうが、田村さんのお宅には今でもたびたび人が訪ねにきますよ。
ちょうど今日もお昼ごろ、家に向かって手を合わせてる方がいました。被害者の関係の方なのかどうかわかりませんが、お盆のころはそういった人たちも多くいましたね。あとはやっぱり物珍しさなのか、特殊な事件だったからなのか、見にきて写真を撮る方も多かったですね。
1、2ヶ月前には田村さんの家の中にまで入ろうとした方がいたみたいで、ドアの取手が壊されたそうです。肝試しか、怖いもの見たさか知りませんが、取手は警察官が数人がかりで修理していましたよ。田村さんたちは今精神鑑定をしているんでしょう? 本当にどうなるのかしらね……」