5つの罪で起訴された木村被告
起訴状などによると、木村被告は2022年11月から23年4月15日ごろまでの間、自宅などで黒色火薬約560グラムを密造し、鋼管に詰めた「パイプ爆弾」2本を製造。同日午前11時25分ごろ、衆院和歌山1区補選の演説会場の雑賀崎漁港で、うち1本を爆発させて岸田首相らを殺害しようとし、警察官と聴衆の2人に軽傷を負わせたとしている。
岸田首相は無傷で、木村被告は聴衆として居合わせた漁師に取り押さえられ、威力業務妨害容疑で現行犯逮捕され、火薬類取締法違反容疑でも再逮捕された。刑事責任能力の有無を問うために地検は5月下旬から約3カ月間、精神状態を調べる鑑定留置を実施していた。
前年に起きた安倍元首相の襲撃犯は、旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)信者二世で、同教会と関係の深かった安倍氏を標的にしたと動機を供述、後の解散命令につながる「世論」構築の引き金となったように見える。
一方の木村被告は、2022年6月に被選挙権の年齢制限が憲法違反に当たるとして国を提訴(後に敗訴が確定)し、訴訟の書面で岸田首相への批判も展開していたが、襲撃事件の取り調べでは黙秘を貫き、動機などの肉声はいまだ伝わってきていない。
兵庫県川西市の自宅周辺でも、事件の記憶はすでに薄れかけていた。近くに住む女性が語る。
「事件前にはお母さんと事件を起こした息子さんが庭に出て花壇をいじっている姿を見かけたりもしました。仲のよさそうな親子で、息子さんも普通の方にしか見えませんし、会ったら挨拶もしていました。
どちらかというとおとなしそうな印象でしたから、最初にあんな事件を起こしたと聞いたときはびっくりしました。お母さんは事件後しばらくご自宅をあけていたようです。当時はマスコミもたくさん来ていましたしね」
事件前、母親のガーデニングを手伝い、近隣からは「優しそうだった」「おとなしそうにみえた」といった印象を持たれていた木村被告。小学生時代は“活発な少年”だったが中学でガラリと変わったという。同級生は(事件当時)こう証言した。
「木村くんは中学1年生のときにまわりから避けられてたようです。違う小学校から上がってきたクラスメイトと合わなくて、目をつけられてしまったと聞きました。とは言ってもそれはクラスだけの話で、廊下で同じ小学校の人に会ったときは挨拶とか軽い会話はしていたと思いますよ。
避けられてはいたけど、暴力とか物を隠されたりといった“直接的ないじめ”でなく、空気みたいに扱われてた感じです。私も図書室で見かけたことあるんですけど、本が特別好きとかじゃなく、かまってくれる人がいないから本を読みにきてたんだと思います」