小さいころは先生や大人を毛嫌いしていた
事件は候補生たちを「一人前」の自衛官にするための訓練中に起こった。午前8時、Aを含めて約70人の候補生に教官や隊員約50人を加えた約120人が参加した訓練が始まり、同9時ごろから89式自動小銃の実弾射撃の「検定」を始めた直後のことだった。
Aが突然3人に向けて計4発を発砲、教官の菊松安親1曹(52)が胸に2発、八代航佑3曹(25)がわき腹を撃たれて死亡、左太ももを撃たれた原悠介3曹(25)が全治3カ月の重傷を負った。
教官や先輩に凶弾を浴びせたA容疑者は、子だくさんの複雑な家庭環境で育ち、教師や大人を毛嫌いして歯向かうようなところがあったという。実家は岐阜県南西部ののどかな農村地帯にあり、事件発生当時の取材に近所の男性はこう答えていた。
「Aくんは6人きょうだいの上から3番目のはず。一番上がお姉ちゃんで20代後半、あと、20代前半のお兄ちゃんと、高校生と中学生の弟がいて、一番下が妹さんだと思う。お父さんはトラックの運転手で、お母さんは結構若い印象だね。まだ子どもがちっちゃいときに引っ越してきたから、ここに住んで10年から15年くらいになるんじゃないか。
ただ、近所づきあいをしたくないのか、ゴミ清掃の集まりなんかにもまったく顔を出さないな。今何人が住んでるのかはわからないけど、子どもがたくさんいるのは近所の人はみんな知っているよ。まだ男の子たちが小さいころは兄弟で田んぼをのぞき込んだり、庭先でよく走り回ったりしていたよ」
幼いころからA容疑者を知っている同級生の母親もこう話していた。
「Aくんと息子は保育園と小学校が一緒でした。ただ、保育園にはAくんとすぐ下の弟さんが一緒に通っていたんですが、急に2人とも辞めたんです。あのご一家はお子さんが多くて生活もかなり苦しくて、小さい子どもたちは全員、児童施設に預けられたと聞きました。
でもAくんが小学3年生になると戻ってきて、息子と同じ小学校に転入してきたんです。手当などが出るようになって、子どもを育てる余裕ができたから施設から帰ってきたと聞きました。そういう過去もあってか、Aくんが先生や大人を毛嫌いしてるところは当時からあったようで、友達とは上手く接しても、先生とはよく言い合いをしたり、もめていたと聞いてました」