お金や“てんちむ”より大事なもの

「大事なもの」とは何か聞くと、「自分の心」と返ってきた。

「自分の心が本当に一番大事。私はどうしたいんだろうって考えると、もっとプライベートを大事にしたいって結論に至りました。てんちむでいるとプライベートをおろそかにしちゃうから、てんちむを辞めない限り幸せにはなれないって思うんですよ。これは今に始まったことじゃなくて、前からずっと言ってることですけどね」

てんちむを辞めたい。

炎上前も、炎上中も言っていたことだ。でも、努力して返金を終えて「てんちむでよかった」と思ったのではなかったのか。

てんちむはバーレスク東京の卒業公演を終えて、目尻を拭いながら「私に生まれてよかった」と言った。その「私」というのは「てんちむ」ではなく「てんちむをまっとうした橋本甜歌」だったのだろうか。

お金にも“てんちむ”にも、執着がない。だからいつでもリセットボタンを押せてしまう。

リセットボタンはてんちむの延命装置になっていたが、リセットして延命できてしまったがゆえに、てんちむによって殺された心を生かす機会は奪われ続けたのかもしれない。自分の心と向き合い育てる間もなく、次々にリセットして新しい自分を作った。

それが幸か不幸かは、本人にしかわからない。

文/秋カヲリ
写真/『推される力 推された人間の幸福度』より出典

#1 「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

#2 「ちょっと今日脂肪吸引してきた」1日2時間睡眠・トリプルワークでてんちむが見せたプロ根性…スタッフをも虜にした、彼女が“推される”理由

『推される力 推された人間の幸福度』
てんちむ
ゴキブリと一緒に寝泊まりし、芋虫にかぶりつく…2千万円を投じた海外旅で、てんちむが気づいた本当の“お金の価値”「お金は使わなかったらただの紙切れ」_4
2023年11月18日発売
1,870円(税込)
344ページ
ISBN:978-4910903040
「私を死なせてでもてんちむを生かす。道化になっても生き抜いてやる」

10歳から29歳まで推され続け、2023年9月に無期限活動休止した天性のインフルエンサー・てんちむの度重なる転落と再起を追い、鬼の自己プロデュースによる【推される力】を彼女の言葉と周囲の人々の言葉で赤裸々に紐解く1冊。
大炎上から半年で5億円を支払った逆転劇の裏側と、活動休止に至る葛藤とは―?

自分をさらけ出して私生活を切り売りし、人気と幸福度に向き合ったてんちむが、29歳最後の日に届けるこれまでの総決算。

「炎上後は『全身整形して別人として生きていきたい』って何度も言ってました」(アシスタント)
「たかが2億2000万円を守って、てんちむ生命を終わらせてたまるか。炎上商法と言われるものをやって、今のバッシングも全て生かして、私を死なせててんちむを生かして、道化として生きて最後の金稼ぎをするしかない」(てんちむ)
「銀座にバケモンが来たな、と思いました。こんなに売上を立てる人は見たことがないですし、たぶん今後も現れないと思います」(クラブ・黒服)
「過程から本番までの見せ方がうまくて、女性は『夢中になってるてんちむを見てると幸せ』ってなるし、男性は『無邪気で愛せる』ってなる。『コイツ、おもろいから追い続けたいな』って思うんです」(友人)
「彼女はどれだけ避けても、投げ出しても、逃げ出しても、その場その場で成功してしまった。家出して上京しても、芸能活動を辞めても、モデルを辞めても、人と向き合わなくても、それでもずっと成功してきた子なんですよね」(元恋人)

――この本を読んだあなたは、私に対してどんな印象を受けるんだろう。強い?自立?自由?破天荒?想像通り?
私はこの本を読んで「とても頑張ってるはずなのに、かわいそうな人」に見えました。この本の取材期間中は、私自身を見直す期間でもありました。(てんちむ)
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