人生に必要なものはほとんどない


南米のジャングル地帯を旅していたてんちむは、ゴキブリが徘徊するホテルに泊まったり、 アマゾン川のローカル食である芋虫を食べたりした。

調理された食用芋虫ではなく、頭が赤黒くて体が薄い黄土色の、ものすごく立派なむっち りした芋虫だ。それを素手で掴み、うにょうにょ動いている状態で生のまま頭からかじって食べたのだ。

先に現地の人が食べると、かじった瞬間に体液がポタポタとしたたり落ちた。真横で見ていたてんちむは「うわ」と眉をひそめたが、その表情のまま「オウケイ!」と頷き、頭からガブリといった。神妙な顔でガジガジとしばらくかじり「いっぱい噛むと液体が出てきます」と周知の事実を述べてから「芋虫って言われなければ平気。あっ、刺身みたいな味する。マグロ」とホントか?と聞き返したくなる食レポをした。

その後、焼いた芋虫も食べた。咀嚼中に「その芋虫は成長すると蛾になる」と言われ「マジで?ホントに(食べて)大丈夫?」と笑いながら飲み込んでいた。5億円返金と同じくらいすごい。

ゴキブリと一緒に寝泊まりし、芋虫にかぶりつく…2千万円を投じた海外旅で、てんちむが気づいた本当の“お金の価値”「お金は使わなかったらただの紙切れ」_3

そんな体験をいくつも重ねたことで、てんちむは「私って頑丈なんだな」と気付いたらしい。てんちむ以外は気付いていた気もするが。

「別にゴキブリと一緒に寝るのも大丈夫だし、芋虫食べるのも『ローカルなものを食べたい』って思ってたからあんまり抵抗なかったです。日本ではいい家に住みたい、ウーバーイーツでおいしいもの食べたい、かわいい服を着たいって欲があったんですけど、それがなくても生きていけるなって知ったんですよね。いろんな執着がなくなったんですよ」

家で過ごす時間が長いてんちむは家の広さや住みやすさを重視していたが、炎上による転落で小さなアパートに引っ越してもさほど不自由を感じなかった。海外でシャワーやトイレがなくゴキブリまで出る宿泊先に泊まっても「別に寝れればいいや」と適応できて「どこでも生きられる適応能力がある」と自覚したらしい。

「海外だとてんちむを知っている人がいないから見た目を気にしなくていいし、どんな環境でも適応できるから広い家も必要なくて、服と家への執着がなくなりました。生きてくうえで本当に大事なものってめっちゃ少ないんですよ。でも見栄とかプライドで欲しいものが増えて、大事なものが見えなくなっちゃう」