プライドも肩書も捨ててからが最強
返金希望者の数かが増え続け、2億2,000万円の貯金を手放しても返金の見通しが立たなかったてんちむは、より多くを稼ぐための最適解を選び続けていた。それがリアルな転落ドキュメンタリーでより多くの人におもしろがられることだった。
転落した生活をここまでさらけ出すのは簡単ではない。知り合いはもちろん、約150万人もの視聴者が「タワマンに住んでいるお金持ちの人気ユーチューバー」というイメージを持っているなかで、ワンルームに引っ越し、ブランド品を売り、ファーストフードを食べる様子を公開するのだ。普通はプライドが邪魔をするだろう。
私生活をさらけ出すことに慣れている人気ユーチューバーでも、てんちむほど投げ打った行動ができる人は見たことがない。
実際、てんちむの新居に撮影で訪れたユーチューバーのほとんどが「えっ、本当に住んでるの?セカンドハウスじゃなくて?」と本気で驚き、疑っていた。今でも「あれはヤラセ」と信じていない人も多いが、特定されるまで本当に住んでいた。(ポストにガムをつっこまれるようになり、身の危険を感じてからはアシスタントのしんちゃんの家で過ごしていた)
炎上前は「クリーンなイメージをつけたい」「キラキラしている自分も見せたい」といった思いもあったが、ユーチューブ活動を再開する前に「プライドは捨てる」と自身に約束した。
「炎上で転落するって、だいぶかっこ悪いじゃないですか。私だって炎上前だったらプライドが勝ってたかもしれないけど、返金額が大きすぎてプライドがどうとか言ってる場合じゃない。
誰に何を言われようが誠意を見せて返金しててんちむを生かすって決めて、自分の全部をユーチューブに売ったときに『よく見られたい』『こういう自分になりたい』みたいな憧れやプライドは全部捨てたんです。
話題になって再生数が伸びて、返金するお金も稼げたからメンタルを保てた部分もあります。仕事第一で生きてきた私にとって、てんちむの死は橋本甜歌の死。お金やプライドより、ファンや信頼を維持しててんちむを生かすほうが大事でした」