お金も腹八分目がいい
むしろ「お金は持ちすぎないほうが幸せ」と考えている。多くのお金があると贅沢を知り、平均的な生活レベルに落とせなくなる。身の回りにお金持ちが増え、自分より上の世界も見えるようになり、劣等感や欲が生まれる。
「上の世界を知らないほうが現状に満足しやすいんですよ。発展途上国だけど幸福度が高くて『世界一幸せな国』って言われてたブータンが、スマホが普及してから国民が他国と比べるようになって、幸福度が一気に下がったって話を聞いて、何でも上を知ればいいってわけじゃないなと思いました。一人の人間として必要な分だけ稼ぐくらいが幸せなんじゃないかな」
しかし、てんちむの行動は「必要な分だけお金を稼げばいい」というものには見えない。タワマン・ハイブランド・ウーバーイーツといったイメージが定着しているように、多くを稼ぎ、気前よく使うライフスタイルだ。
「私はインフルエンサーで自分を発信しているから、かわいい服を着たほうがいいし、楽しいことに挑戦したほうがいいし、いろんなところに行ったほうが目立てるし、ネタを作れます。ついつい『お金があるに越したことはない、もっとがんばって稼がなきゃ』って思っちゃうんですけど、バッシングされながら得たお金で贅沢しても幸せじゃない。インフルエンサーじゃなかったら、もっと腹八分のお金で生きられる気がします」
刺激中毒はインフルエンサーの強み
刺激中毒のてんちむは、腹八分主義だ。満たされると世界が色褪せていく。海外シリーズでも「あと2〜3日滞在したいな」くらいで次の国に行くのがちょうどよかった。腹八分でわずかな心残りを抱えておくことが、飽きずにロマンを持ち続けるコツだ。
あらゆる刺激は花火のように爆ぜて、儚くひらひらと舞い落ちる。すぐ次の花火を打たな ければ輝かしい日々は続かない。インフルエンサーがSNSのコンテンツとして消費される 昨今、生き残るには消費され尽くさないようアップデートし続けなければならない。てんちむ流に言えば「喰われる前に喰う」ということだ。
そういった意味で、刺激中毒なてんちむの飽き性は強みでもある。
「定期的に自分に飽きて『このままだとつまらなくて嫌だ』って思うタイミングが来るんですよね。大体は安定しているときか、でっかい目標がないときです。海外に行ったのも、このままステイホームの日本で変化なく過ごすのが嫌だったからだし、マンネリした環境にいるのは時間がもったいないって思っちゃうんですよね」
2,000万円の海外旅行を味わい尽くしたてんちむは「本当に必要なものはほとんどない」と知った。装飾品にまみれていくと、本当に大事なものが見えなくなる。
それを痛感したのは、海外のホテルでゴキブリに遭遇し、芋虫を食べたときだった。