スタッフも目を丸くした“集客力”と“猛練習”

Manさんが一番驚いたのは、やはり集客力だった。ゲスト出演するインフルエンサーのなかでも、てんちむの集客力は別格。通常は「来てください!」と告知したり直接連絡したりして客席を埋めるのだが、てんちむは告知せずとも連日満席だった。125名の客席は、毎回半数がてんちむ客で埋められた。1日3公演あるため、1日あたり200人を確実に集めている。メインは20代女性で、客席からてんちむをじっと見つめているのが印象的だったと言う。

『バーレスク東京』の人々は、てんちむが働くと聞いて「ちゃんと練習するのか」と疑問を感じた。インフルエンサーのゲスト出演は何度もあったが、1曲ほど出演してにこやかに手を振るケースが多く、てんちむほどがっつりフル出演するゲストはいなかった。

「ちょっと今日脂肪吸引してきた」1日2時間睡眠・トリプルワークでてんちむが見せたプロ根性…スタッフをも虜にした、彼女が“推される”理由_3


てんちむは「ステージに立つからにはちゃんとやる」と深夜練習に明け暮れ、直接指導したダンサー講師は「てんちむちゃん、めちゃくちゃ練習してくれる!」と目を丸くした。

ハイレベルな本格ダンスにも自ら「やりたい!」と手を挙げ、次から次に覚えていく。ダンス講師はいるが、過密スケジュールのてんちむは講師以外のダンサーにもスキマ時間に教えてもらわないと間に合わない。講師以外のダンサーは教えてあげても給料が発生せず、あくまで好意によるお気持ち指導になる。つまりダンサーに無償で教えてもらえるだけの人間関係が必要で、それがあるから「やりたい!」と手を挙げられたわけだ。

Manさんは「あれだけの自信を持てるのがてんちむ」と快活に笑う。

「『このダンスやってみる?』って聞いて、断われたことは一度もないです。普通はもっと日和るんですけど、てんちむは『やります!』って臆さずに言うんですよ。それで本当にやり切っちゃう。これがてんちむかって思いました」

てんちむは引退時に8曲を披露している。1演目あたり2時間×3回のレッスンが必要なので、多くのダンサーの協力を得ながら約50時間も深夜練をしたことになる。自主練も入れたら、100時間はゆうに超えるだろう。

てんちむにダンスを教えたダンサーは、卒業公演では教え子を見送る先生のように大泣きしている。Manさんは当時の風景を思い返し、目を細める。

「ダンサーはみんな『マジですごい!』って感動してましたよ。卒業公演の後、感極まったダンサーから『てんちむちゃんみたいになりたいと思いました!』ってメッセージが僕に届いて、みんなが憧れる存在になってましたね」