「ちょっと今日脂肪吸引してきた」
プロ意識は脂肪吸引直後の出勤でも感じられたと言う。
「ある日、天華さんが『ちょっと今日脂肪吸引してきた』って出勤してきたんです。普通はみんなダウンタイムで痛いから椅子に座ったり動き回ったりできないのに、天華さんは『痛いけど、とりあえずがんばるわ』ってガシガシ動き回るし、バーレスクでも働くし、そういうプロ意識にも驚かされました」
そんなてんちむを、平出さんは尊敬していた。
「彼女は子役時代からずっと表舞台に立って生きていた子なので、若いのに起業家の方たちと同じレベルで会話できる感性を持っていました。それもプロ意識と呼べるのかもしれないですね。黒服でなく一人のビジネスパーソンとしても、こういう人がどこでも成功できる人なんだろうと尊敬して見ていました」
こうしたプロ意識は、トリプルワークを支え続けたアシスタントのしんちゃんもひしひしと感じ取っていた。
バーレスク東京の舞台は、ありったけのスパンコールを散らして原色のライトで染め上げたような空間だ。見ている分には華やかだが、てんちむの卒業公演でゲストとして舞台に立ったしんちゃんは足が強張るのを感じた。
「エグいくらい怖いです。立った瞬間に、あの場にいる観客全員の視線が集まるんですよ。撮影OKだから向けられているカメラの数も多くて、頭が真っ白になります。あそこでパフォーマンスできる人は、甜歌含めプロですね」
自腹返金を公言して貯金がなくなり、周りが心配になるくらい不安定な精神状態に陥っても、想定外のアクシデントが起きて公演当日の朝に号泣しても、舞台に出れば“いつものてんちむ”になった。「やっほー、てんちむです!みんな息してるー?」とフルスマイルで呼びかけ、その場を盛り上げる。
どんなに疲れていてもファンサービスは怠らない。以前からファンが並んでいる野外イベントでは熱中症対策に塩飴を用意して手渡しで配ったり、街中で声をかけられたら撮影中でも対応したりして、ファンが喜ぶ行動を徹底している。ここまでのファンサービスを行うインフルエンサーは稀だ。
「ファンのおかげで今の自分がいるので、感謝すべきはファン。自分が街中で推しに会ったときにどう対応されたらうれしいかを考えてファンサービスしています。ファンの子に無理させたら自分も苦しくなるので、全部のイベントに来てとは絶対に言いません。相手の立場に立って接するようにしています」
そんなてんちむを『バーレスク東京』のスタッフやダンサーはどう見ていたのか。
何人ものダンサーを見てきたスタッフのManさんは「“びっくり”の一言に尽きる」と言った。