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お金は手段であり幸福ではない

「お金は使わなかったらただの紙切れ」と言うてんちむは、経験のための支出も惜しまない。 海外旅行のなかでもアマゾン川のアテンド・ツアーは高額だったが、希少な経験を得るための投資だと捉えた。

お金を使うっていうのは、経験を買うってこと。アマゾン川みたいに特殊な場所に行くのはお金がかかるから、そこでの体験が得られる人は多くないじゃないですか。そういう希少価値のある経験は自己投資の意味で買ったほうがいいって思ってるんです。中身を磨く自己投資になるから大事なんですよね」

てんちむが「内面を深めたい」と言っていたように、海外シリーズの裏テーマは自己成長だった。未知の体験をしたときに自分がどう思うかを知り、今までなく自分と対話できたと語る。それができたのはお金があったからでもある。

「てんちむってポジティブだねとか行動力があるねとか言われるんですけど、お金のおかげでもあるんですよ。お金があるから行きたいところに行けるし、臨機応変に対応できるんです」

ゴキブリと一緒に寝泊まりし、芋虫にかぶりつく…2千万円を投じた海外旅で、てんちむが気づいた本当の“お金の価値”「お金は使わなかったらただの紙切れ」_1
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海外に発つ数か月前、返金に追われたてんちむの口座残高は10万円だった。海外に滞在している最中にいくつもの案件を引き受け、連日ユーチューブに動画を投稿し、海外旅行そのものをコンテンツに変えて仕事にすることで、海外旅行にお金を使いながら稼ぎ、2,000万円分の海外旅行を実現した。

お金がなくても挑戦や再起はできる。2,000万円もなくたっていろんな国に行ける。ただ、お金には可能性と選択肢と勇気を拡大し、思い切った決断を後押しする力がある。生活費もままならない状態で、ままよ!とリセットボタンを押すのは無謀だ。

財力は経済的自立とイコールであり、自分の意思を尊重する礎になる。血の滲む返金生活でそれを体感したてんちむは、貪欲に稼ぐことをやめなかった。たかがお金、されどお金なのだ。

しかし、てんちむはお金至上主義者ではない。ユーチューバーになる前は「お金を稼いだら幸せになれる」と信じていたと言う。

「お金を稼ぐためにユーチューブ活動を始めたら、人気になるにつれてしがらみや誹謗中傷も増えて『お金を稼いでも全然幸せじゃないじゃん』って気付いたんですよ。入ってくるお金がストレスに比例しているように感じることもあって、すごくしんどくなったとき『私はこんなに心を貧しくしてまでこのお金が欲しいのか?』って自問して、いらないと思ったんです。 お金は心の余裕を生むけど、幸せになる手段にしか過ぎないんですよね」