3ヶ月後のとある日の朝、10人くらいの警察が…
――ついに袂を分かつ、と。
そうしたらアイツが、東京に帰ったその足で警察に被害届を出した。怪我もちょっと盛って、全治2週間以上の診断書を取りに行って、警視庁の組対(組織犯罪対策部)に、「山梨のヤクザの仲村にやられて、5,000万円を要求された。盗聴器も仕掛けられた」と。
なおかつ、揉み合った時に僕が純士の携帯を踏んじゃって、画面がヒビ割れたらしく、器物損壊という罪も足されて。
盗聴器じゃなくて、俺はその場で聞いちゃっただけ。他には、俺がそのマンションで少女たちを監禁している、という設定にもされて。20歳を越えている訳だからもちろん少女じゃないし、そもそも従業員の寮として使っていただけ。
それで組対が山梨県警に連絡を取って、僕のことを調べたら、「ヤクザじゃない普通の経営者だ」ってわかったらしいんだけど、被害届は受理されてしまって、僕の逮捕状が出ちゃった。
3ヶ月後のある朝、10人くらいの警察が僕の家に来た。「なんですか?」って聞いたら、「瓜田くんのことわかりますか?」と。「わかりますよ。東京に叩き返しました」って伝えると、「その件で逮捕状が出ちゃってるんだよね。連れて行かないといけない」と。
逮捕状も見せられて「手錠はかけないけど、来てもらえるか?」と聞かれたから、「悪いけど1~2日で帰らせてもらうよ」って言ったんだけど、取り調べを受ける中で、アイツの話と僕の話が全然違うから、10日過ぎても勾留が終わらなくて。
――長いですね(起訴前の勾留は最大20日間)。
でも僕は純士を“やる”時に、日サロの店員を証拠人として連れて行っているんですよ。手を出すかもしれないけど、その場で起きたことを明確にしておくために。その子を取り調べに出したら、僕の話が通って、いよいよ勾留20日っていう手前で、嫌疑不十分で釈放された。
疑いが晴れたのはいいものの、こっちは頭にきてるじゃないですか。留置所の中で「あんにゃろー」って腸が煮えくり返ってたんだけど、警察もそれを勘づいたのか、「絶対にやり返しに行っちゃダメだよ」という誓約書を、留置所を出る前に書かされて(笑)。
――そういう誓約書もあるのですね。
名誉毀損で訴えようかとも思ったけど、弁護士に相談したら「瓜田さんにお金がないから、裁判に勝っても意味がない。もう関わらない方がいい」と諭されて。そういう経緯で「もういいや」って、僕は裏の世界に潜ったんです。
それが『BreakingDown 5』のオーディションでの「裏から表に出てきた」という僕の言葉に繋がるんです。“裏”というのは、経営者という意味で、ヤクザという意味ではないですよ(笑)。
――あの言葉にはそういう背景があったのですね。
ちなみに、その事件の顛末を東京スポーツが記事にしたんです。「前科13犯のアウトロー・瓜田純士が、人生初の被害届を提出。その犯人は山梨のXで、少女を監禁して売春行為をさせている」みたいな。純士なりのストーリーを作ってて、ちゃんと記者と打ち合わせて、俺が逮捕された次の日くらいに発刊。たしか全国紙の一面ですよ。
ネットの記事は残るから、「仲村は少女を監禁して売春させたんじゃないか」という話がいまだに残っていますけど、山梨の人からしたら、僕はめちゃくちゃいい人で通ってますからね(笑)。
自分で自分を紹介すると、人情味があって、“弱きを助け強きを挫く”じゃないけど、そういう存在。
組に入門なんてしたこともないし、刑務所に入ったこともない。留置所はありますけど、そんな程度なんです。
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取材・文/佐藤麻水
撮影/浅井裕也