2類相当の継続が長引けば長引くほど、国民、とりわけ高齢者にとっては弊害の方が大きい
オミクロン株になってから、日本の死者数が目立って多かったのは、人口当たりの感染者の総数自体が多く高齢者率が突出して高いからで、致死率は世界中どこでも同じだった。
新型コロナはウイルスの種類によって感染率には人種差があり、デルタ株まではヨーロッパ、米国、南米で感染率が高かった。
そして、なぜか、オミクロン株は最初は欧米で広がった後、日本、韓国、中国などの東アジアと、オーストラリア、ニュージーランドなどオセアニアで感染者が増え、中でも突出して高齢化率の高い日本で多くの命が奪われる結果となった。
実は、致死率が季節性インフルエンザと同程度なら、2類相当の継続が長引けば長引くほど、国民、とりわけ高齢者にとっては弊害の方が大きい。
何より問題なのは、「2類相当」となっている限り、保健所と急性期の大病院が感染者の対応の中心となるため、それ以外の医療・介護関係者は積極的に介入できないことだ。
2022年夏の第7波では、厚生労働省は保健所や医療機関の逼迫緩和策として、保健所への届け出を高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクが高い人たちだけに限定したが、高齢の患者の多くは、従来通り保健所があっせんして急性期病院へ入院することとなった。
入院して安静を強いられることとなった高齢者は、十分なリハビリを受けることもできず、いっきに廃用症候群が進み、要介護度が上がり最悪の場合は寝たきりになってしまう。
廃用症候群とは、筋肉・骨組織の萎縮、心肺機能や意欲の低下など、過度な安静で活動性が低下したことによって心身に不都合な状態を来たすことだ。
高齢者の場合は寝たきりの原因にもなる。たとえ、コロナ感染後に自宅に居続けられたとしても、訪問介護サービスやデイサービスなどの介護サービスは実質的に利用できず、やはり状態は悪化した。
要介護状態や基礎疾患のあった高齢者を中心に死亡者がいっきに増えた可能性
「2類相当」が維持された状態では、介護従事者が濃厚接触者になったら他の介護者の介護ができなくなってしまうので、介護施設の一部の経営者は、ホームヘルパーなどに対して、コロナに感染した高齢者の自宅への訪問を控えるように指示せざるを得なかった。
十分なケアが受けられなくなったこともあってオミクロン株では、コロナの重症化というよりは、要介護状態や基礎疾患のあった高齢者を中心に死亡者がいっきに増えた可能性がある。
今後のためにもきちんと検証する必要があるが、厚生労働省や専門家会議が「2類相当」を維持することに固執したために、廃用症候群が進んで弱り命を落とした人も少なくなかったのではないか。
文/上 昌広 写真/Shutterstock
#1『「コロナをインフルと同じ扱いにしたら医療が逼迫する」煽り続けた厚労省・医療関係者・マスコミの罪…遅すぎた5類移行がもたらしたもの』はこちらから
#3『国民生活を犠牲に「2類相当」を維持して感染症ムラに補助金を投入し続けた厚労省…世界とは異なる〝専門家〟が新型コロナ対策を仕切った日本の不幸』はこちらから