財務省も認めた「ワニの口」の嘘とは

実際、所得税減税騒動の裏では、本年の政府税調の答申に従って扶養控除の縮小などの、サラリーマン増税の実現に向けた検討が着々と進められている。

元財務事務次官の矢野康治氏は、増税・緊縮を訴える講演で全国を回っているようだ。すでに財務省職員ではない者が、自らの意思のみで動いているとは考えにくく、財務省からの要請を受けてのものである可能性が高いのではないか。「元財務事務次官」という経歴の後光効果で、増税・緊縮を受け入れることを国民に浸透させるには、うってつけの人選だといえる。
なお、矢野氏は、講演の際に「私が次官在任中に財政再建を実現できず申し訳ありませんでした。」と謝罪しているそうだ。何を勘違いしているのだろう、彼はいつから政治家になったのだろうか?

この矢野氏といえば、財政破綻を煽る「ワニの口」なるグラフを作成した張本人だそうだが、この「ワニの口」、一般会計歳出と一般会計税収の比較であって一般会計歳入との比較ではない。

ちょっとわかりにくいかもしれないが、国債による歳入はワニの下顎に含まれていない。そもそも一般会計において計上される「税収」とはあくまでも見込み額であり、確定した額ではない。

岸田首相は「“増税メガネ”というより“増税パペット”」黒幕・財務省の次なる一手は「元財務事務次官」の全国行脚。減税はさらなる増税の下地つくりか…_3

よって今回のように最終的に確定した額は見込み額より増えていたということは普通にありうる話であるし、確定していないゆえに歳出、つまり政府の財政支出の前提となっているわけでもない。つまり比較すること自体がナンセンスなのだ。

しかもそれ以上に、財務省も認めた「ワニの口」(財政の危機的状況を表す言葉として使われる。財務省HPのキッズコーナーでは、「歳出と税収の差はワニの口のように開き、税収の不足を補う公債の残高がどんどん積み上がってきています」と記述されている)の嘘がある。

それは、一般会計歳出には国債の償還費が毎年十数兆円入っているのだが、本当に国債を現金召喚して発行残高を減らすために計上していたわけではなく、「あくまで公債政策に関する政府の節度ある姿勢を明示するために導入されたもの」である。
つまり端的に言って不必要な費用であったということだ。これは自民党の政務調査会に置かれた「防衛関係費の財源検討に関する特命委員会」の提言の中に明記されている。

要するに、矢野氏は「ワニの口」を意図的に、「ワニ」の意思に反して無理やり広げていたということである。まさにワニの虐待である。ちなみに実際のワニはふだんは固く口を閉じているそうだ。

そうまでして財務省は増税・緊縮を進めたいということなのだろう。もちろん、岸田総理は、そんな財務省の完全な言いなりである。「増税メガネ」というより「増税パペット」といったところか。

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取材・文/室伏謙一