細分化されたイスラエル国防軍

もっとも、国防軍には他にも特殊部隊が陸・海・空ごとに、また、地域軍ごとにいくつもある。なかでも強力なのは、中央司令部第98空挺師団の隷下で運用される「オズ旅団」(第89コマンド旅団)だが、同旅団には「デュブデバン」「マグラン」「エゴズ」ら独特の訓練を受けた強力な特殊部隊がある。

黒煙を上げるガザ地区 写真/shutterstock
黒煙を上げるガザ地区 写真/shutterstock

デュブデバン(第217部隊)は対テロ専門部隊であり、偵察部隊でもある。パレスチナ人に擬装してパレスチナ自治区に潜入し、情報収集活動や破壊工作を行う「ミスタービム」と呼ばれる潜入活動を、かなり深い部分まで行なっている。

マグラン(第212部隊)は空挺降下などの敵地潜入の訓練を受けた偵察部隊だ。平時でのスパイ活動というより、戦時での単独・少人数での偵察任務を担う。

エゴス(第621部隊)も少人数で行動する特殊部隊で、敵地に長距離潜入して偵察と破壊工作を行なう部隊である。今回のガザ侵攻では、前述したサイェレット・マトカルだけでなく、これらの部隊もおそらく投入される。

ガザ侵攻において、もうひとつ注目される特殊部隊は戦闘工兵軍隷下の部隊だ。イスラエル軍では、地雷や仕掛け爆弾の敷設や処理、建物の爆破、瓦礫撤去、橋梁の建設などを担当する工兵部隊の主力が、自ら戦闘もしながら任務をこなす戦闘工兵部隊と位置づけられている。その中で市街戦の前面に投入されるのが「ヤハロム」(特殊戦闘工兵隊)だ。

ヤハロム部隊は、建造物が密集して地下トンネルが張り巡らされたような戦場で、敵の位置やトンネルの位置などの偵察活動をしながら侵入し、敵の仕掛けを無力化する。

その隷下には、敵陣深くに潜入して偵察・破壊を実行する「ヤエル部隊」。
敵の特殊な仕掛け爆弾やブービートラップ(罠)を回避する「ヤクサップ部隊」(爆弾処理隊)。
地下トンネルの捜索・破壊を専門とする「サムール部隊」(通称「ウィーゼル部隊」)。
爆薬や専門器具で建物のドアや壁を壊す「ミドロン・ムシュラグ部隊」。
軍用ロボットを運用する「へゼック部隊」などがある。