チャイムを押しても子供の泣き声が聞こえるだけで無反応

しかし、2021年の夏ごろから一家に徐々に異変が起きる。

「そのころから週2、3回のペースで奏良くんの泣き声が聞こえるようになったんです。しかもぐずるような感じではなく、『ワー! ワー!』と泣き叫ぶような声が2時間近くも続くんです」(同)

虐待を疑った近隣住民は一家の様子を尋ねることもあったという。

事件当時、永沼容疑者が住んでいた我孫子市のアパート(撮影/集英社オンライン)
事件当時、永沼容疑者が住んでいた我孫子市のアパート(撮影/集英社オンライン)

「その年の11月ごろに近所の人と一緒にアパートのチャイムを4、5回ほど押したら、ドア越しにお父さんの声で『大丈夫なんで!』と言ってきまして……。『これはマズい』と思って我孫子市の子ども虐待防止対策室に電話して対応してもらうようにお願いしたんですけど、その後も奏良くんの泣き声が止むことはありませんでした。今年1月ごろにも再度アパートのチャイムを押したんですが、ドア越しに鳴き声が聞こえるだけで返答は一切なく……」(同)

事件が起こったのはその2週間後だったという。50代の近隣住民女性もこう話す。

「私はそこまで気にならなかったけど、以前、アパートのすぐ近くに住んでいた人から『(泣き声が)すごくうるさくて困ってるの……』と相談されたことがあります。あまりにもひどかったので虐待されてるんじゃないかと何度か児童相談所に連絡して、直接自宅に行って『大丈夫―?』と声をかけたけど、まったく返答はなかったそうで……。
こんなことになってしまい本当に残念だし、どうにか保護してあげられなかったんですかね」

安孫子市役所(撮影/集英社オンライン)
安孫子市役所(撮影/集英社オンライン)

市の対応はどうなっていたのか。前出の70代女性は話す。

「事件があった翌日に我孫子市の『子ども虐待防止対策室』に電話して『家には行ったんですか?』と聞くと『行ったけどドアを開けてもらえなかった』と言っていました。事件直前まで、毎朝7時半ごろに保育園に向かうためにお父さんと手をつないで車に乗り込む姿を見ていたから『どうにかしてやれなかったのか...』と残念でなりません。

ただ、家族3人で出かける姿は見ていましたが、お母さんと奏良くんが2人で外出するのは一度も見たことはありませんでした。お父さんに懐いている感じで、『あのお母さんは子育て嫌いなのかな?』と思ってました。事件が起きた2ヶ月後には、お父さんは家を出ていったと聞いています」