「選手はなかなか勝てず、いまでもコンプレックスがあると思います。それをどう振り払ってあげるか。だから、守備なんです。打撃は調子の波がある。守れたら勝てる。守備と走塁さえできたら、大差で負けることはないんです」

投手陣は安定している。昨秋、関学大・黒原拓未投手(21年広島ドラフト1位)に投げ勝ったエースの水江日々生投手(3年=洛星)や最速152㌔右腕でプロ注目の水口創太投手(4年=膳所)ら、層が厚くなってきた。

侍ジャパン監督も驚愕! 京大野球部が実践する「圧倒的強者の倒し方」_c
エースとして奮闘する水江日々生投手。関大、立命大などの強豪校に真っ向勝負を挑み、勝ち投手となっている

だからこそ、手堅い守りで泥臭く接戦を拾いにいく。新体制になって、シートノックに走者をつけてタイムを測るなど、新たな練習も取り入れた。実戦に近い形で意識づけを行った結果、守備のイージーミスは少なくなり、引き締まった試合が増えた。成果は出始めている。

「優勝するぞ!」のメッセージに隠された真意

近田監督はこの冬、選手の前で言い切った。

「優勝を獲りに行くぞ。勝負事なのでトップを取らないと楽しくない」

監督は本気だ。練習拠点がある京大の吉田キャンパス近くに引っ越した。普段は自ら打撃投手を務め「打者の特徴を投手目線から見たい」と話す。公式戦のベンチでは外野寄りに立つ。

「自信がなかったり、あまりチームと関われないとき、選手は後ろに行ってしまう。これは違う。みんなで、前のめりにね」

一丸になるためだった。「本当はサインを隠したいんですよ」と苦笑いするが、行動に気を配る。白星はリーダーの器のかたちにしか入らない。アメとムチを使い分け、選手の自主性も重んじている。