新興国の経済成長が続く限り肉争奪戦は終わらない

また、ブラジル産の若鶏肉も値段が高騰している。理由は他国が高値で調達するため、日本が買い負けているからだ。数年前までは日本より高く買ってくれる国はなかった。多くのブラジル養鶏農家は商社を通じて鶏肉を販売する。養鶏農家が言語の違う国に、貿易実務まで請け負って販売するのはなかなか難しいからだ。

このところ商社のもとには「日本が買ってくれる価格よりも中国が買ってくれる価格のほうが高い」と値上げを交渉されるようになった。日本がその交渉を断ると中国に振り向けるといわれる。

「中国の富裕層がマグロの旨さに気づいてしまった…」新興国の経済成長で加速する世界食糧争奪戦の中、日本が次に買い負けする食品は…_3
すべての画像を見る

これも経済合理性のため養鶏農家を責めるわけにはいかない。

日本では若鶏肉ではなく、これまで無視されてきた親鶏肉がミンチ材料に使われるようになった。それでも日本が買い負けるケースが多くなった。他国はブラジル産を選択していなかったが、ウクライナ戦争でウクライナからブラジルに切り替えたため全面的に品薄になったのだ。たまたま2022年は鳥インフルエンザもあり、鶏めしの素を作っているメーカーは供給不足から生産を停止せざるをえなかった。

これら食肉はもはや調達戦争の色合いさえある。食肉を忌避する宗教はあるものの、国連食糧農業機関のデータでは、一人あたりGDPと食肉需要はおおむね正の相関にある。新興国の経済成長が続く限り肉の奪い合いになる。

文/坂口孝則

#1 円安、パワハラ動画拡散、日系企業のブランド力…ベトナム人労働者の日本離れが進んでいる3つの理由

#3 日本はなぜ木材を外国に依存するのか? 「ウッドショック」で買い負ける日本が森林大国なのに木材を自給できない理由

『買い負ける日本』(幻冬舎)
坂口孝則
「中国の富裕層がマグロの旨さに気づいてしまった…」新興国の経済成長で加速する世界食糧争奪戦の中、日本が次に買い負けする食品は…_4
2023年7月26日
¥1,034
248ページ
ISBN:978-4-344-98698-5
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著になっている。日本企業は、買価が安く、購買量が少なく、スピードも遅いのに、過剰に高品質を要求するのが原因。過去の成功体験を引きずるうちに、日本企業は客にするメリットのない存在になったのだ。調達のスペシャリストが目撃した絶望的なモノ不足と現場の悲鳴。生々しい事例とともに、機能不全に陥った日本企業の惨状を暴く。
amazon