利用する時間が10時間を超えるティーンエイジャーが最も幸せでない

この理由としてスマホやパソコンの利用が関係している可能性がある。『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセン氏は著書の中で、パソコンやスマホを利用する時間が10時間を超えるティーンエイジャーが最も幸せでないと感じているという調査結果を紹介している。

韓国の建国大学校で行われた思春期の学生を対象にした調査では、インターネット依存は、うつ病の発症と強い関連が見られていた。そして、嫌なことから逃れようとする危機回避性が強く、自己指向性が低いという傾向が見られた。自己指向性が低いと、目的意識、決断力、責任感などが低くなる。

こころにとってマンガは、初めは趣味だった。紙のコミックで読んでいたときは、少し夜ふかしすることはあっても、明け方になるまで読み続けることはなかった。ところが、いつの間にか好きなマンガを読み終わったら、自動的にSNSや動画のアプリを開くようになった。

SNSは、友人の情報やこころが好きなお店の商品が現れ、いつまで見ていても飽きない。たまに自分で投稿すると、それに対して「いいね」が何件ついたのか、どんなコメントが入ったのか見たくなって、何度も自分の投稿を見たりする。次々と興味が移り変わり、没頭する。

恐怖! スマホがあなたの脳を支配するメカニズム…1日の利用時間が10時間超の10代が「最も幸せでない」と感じるワケ_4

いつの間にかこころにとって、スマホは心の安定剤のようになっていた。忙しくて遅く帰宅した日や仕事がうまくいかずに落ち込んだ日は特に、寝床に入る前にマンガアプリを開いてしまう。

看護師になってからは毎日忙しく働いているのに、スクリーンタイムは、なぜか毎日4時間を超えている。明日は朝から仕事だから早く寝たほうがいいとわかっていても、毎晩睡眠を削ってスマホを見続けることがやめられない。朝起きるときには、いつも昨日早く寝ればよかったと後悔し、仕事に行くのが億劫になり、暗い気持ちでなんとか体を起こして1日が始まる。今晩こそは早く寝るぞと思いながらできない自分は、本当にダメな人間だと思えてくる。

仕事に遅刻し、休憩室での出来事があったその夜、こころはうたた寝から目を覚ますとベッドの上でぼんやりスマホを見続けた。ニュース、SNS、動画、そしてマンガを読みふける。「そろそろお風呂に入らないと……」そう思いながらもやめられない。やがて時間が過ぎ、途中で時計を見ると深夜3時を回っていた。ちゃんと眠ろうと思って目を閉じても眠れないので、再びスマホを見る。マンガを見たり、うとうとしたりを繰り返しながら時間が過ぎていった。

スマホのアラームが鳴った。朝の7時だった。いつの間にか眠っていた。シャワーを浴びて仕事に行く時間だったが、体が動かなかった。閉じたカーテンから朝の光が透けて見えるが、部屋の中は薄暗い。「もう、どうでもいいや」と、静かで暗い部屋の中で、こころはベッドの上でまたスマホに手を伸ばし、マンガのアプリを開いた。

文/山下あきこ

#2『起きたらまずチェック、風呂場まで持っていく、着信音が気になる…恐怖!“スマホ依存症”の度合いがわかるチェックリスト』はこちらから

#3『本当は怖すぎるチョコレート依存症…「もうそんなに食べちゃったんですか…」ごはんの代わりに摂取はマジでやばい』はこちらから

『悪習慣の罠』 (扶桑社新書) 
山下 あきこ 
2023年7月1日
1,100円
256ページ
ISBN:978-4594095130
タバコ、酒、甘いもの、ラーメン、スマホ、パチンコ、恋愛…
なぜ、好き・楽しい・おいしいが病気になるのか?
多くの患者を診察してきた専門医が説く!


◎脳は快楽を求める
◎「物への依存」と「行為への依存」
◎糖質の鎮痛効果
◎小麦の強い依存性
◎スマホを見る時間の減らし方
◎ギャンブル大国日本は依存者が多い
◎相手との適切な距離を保てなくなる恋愛依存症
◎酒好きとアルコール依存症の違い
◎依存のできあがっていく仕組み
◎恐怖だけでは悪習慣を断ち切れない
◎自分の依存を直視し言葉にして伝える
◎ワクワクし幸福度を高める行動を習慣にする

【目次】
はじめに――退屈に耐えられず私たちは刺激を求め続ける
第1章 依存を招く悪習慣の罠
第2章 悪習慣の罠にハマった人たち
第3章 飲酒と喫煙の悪習慣が及ぼす害
第4章 飲酒の悪習慣を断ち切る
第5章 悪習慣の罠からの脱却
第6章 現在の快楽を得るか未来の幸せを求めるか
amazon