3種類のギフテッド教育とは

米国のギフテッド教育の先進事例も紹介された。研究する委員からは、ギフテッド教育の種類が3類型あり、「早修(acceleration)」「拡充(enrichment)」「2E(twice-exceptional)」と示された。

早修は、飛び級や早期入学など、教育プログラムを通常より早く履修したり、年齢を超える学力を示す子どもに合ったレベルの教育をすること。

拡充は、個人学習やプログラムへの参加など、通常学校で教わる範囲を超えた広く深い内容の教育を与えること。

2Eは、発達障害などがありながら特定分野に高い才能を併せ持つ子どもへの教育をさす。

そして、それぞれ良い点と問題点が指摘された。

早修の良い点は、能力よりも遅れた授業により生じるストレスを回避でき、子どもの学習の達成水準を高くすることができる。一方、問題点は、社会性や協調性といった人としての素養が身につきにくいことや、教育格差を拡大することなどが指摘された。

拡充は、創造力や応用力などを豊かに伸ばすことができ、社会性も身につく、とされた。一方、問題点は、子ども同士の競争性がなく、学習する動機付けが弱くなることや、教材や教員確保にコストがかかることが指摘された。

委員は、「日本に才能教育の実践的な蓄積がなく、外国の例を紹介するしかない。現場で担う教師が育っていない。早修と拡充、2Eを融合するのが、日本型の才能教育として理想ではないか」と述べた。

なぜ、国は才能教育について議論を再開したのか?“ギフテッド”と呼ばれる子どもたちへの支援を通して目指したい、誰もが生きやすい社会_2

当事者による切実な訴え、決まった方向性

そして、議論の方向性が決まったと私が感じた会議が、21年11月にあった。第4回の有識者会議だ。そこでは、特異な才能がある児童生徒やその保護者に向けて行ったアンケートの結果が示された。808人から回答が寄せられ、計980件の事例が挙げられた。

「0歳10カ月で日本語と英語ができる」

「小学生で分子や電子、核融合に興味」

などと多彩な才能の事例が紹介された。同時に、

「授業が面白くないと我慢の限界がくる。学校脱走を重ね、不登校になった」

「学校ではみんなと違う部分が強調され、いじめの対象となりやすい」

などと、切実な訴えが多く寄せられた。才能があるがゆえに、学校や社会で悩みやトラブルを抱えている子どもが多い実態が、明らかになった。

保護者からは「先生に、ギフテッドの特性を学ぶ時間をとってほしい」などと、教員の理解を求める意見も多数寄せられていた。その結果を踏まえ、会議では委員から「多くの子どもに困難が見られ、保護者からも支援が痛切に求められている」と意見が出た。異論は出なかった。

これまで、特異な才能はあるが学校で奇抜な行動が目立ち、いじめられたり、授業が退屈で不登校になったりする子がいることは、各教育現場や医療機関、不登校支援の団体などから指摘はされていた。だが国がアンケート調査でそうした実態を把握した。国がやるべきは、その困難を取り除くことであると、議論の方向性は定まったように感じた。