みんなと遊んで気づいた「違い」
そのころから、周囲との違いも感じるようになったという。
「自宅で遊んでいる時は感じなかったのですが、幼稚園でみんなと過ごすようになって、ちょっと周りの人と話が合わないとか、周りの人が好きなことが自分はあまり好きではないとか、思うようになりました。ほかの友達が遊んでいるものもあまり面白いと感じられないなということもありました」(都央さん)
元素のことなどを話しても興味を持ってもらえないため、気持ちをセーブしながら周りの人と話していたという。
それまで、純子さんは都央さんのことを「ちょっと変わっているところがある」と思っていた。敏感で靴下は同じメーカーのものしかはかない。ただ、初めての子育てで他の子どもと比較はできず、「少しこだわりがあるのかな」と感じていた。周囲から「ギフテッド」の存在を教えてもらったのは、そんな時だ。知人に勧められ簡易的な検査を受けたところ、IQが高いとわかった。小学1年の時に受けた検査でIQが154だった。
「息子のつらさを初めて知った」
IQが高いとわかった時にはどんな心境だったのか。
純子さんは「息子がギフテッドかもしれないってわかった時に、お母さんって自分の子どもがお友達と同じように遊んで、同じように進学して、と知らず知らずのうちに思っているんだなって気づかされました。『普通じゃない、人と違う』ということが当時は不安でした。違うということを認めたくないという気持ちもありました」と当時の思いを語る。
同時に、IQを検査してくれた医師から、IQに差がある子どもたちと過ごすということは、学年が異なるクラスで過ごすようなものだと教えてもらった。「学年が違うクラスで過ごすような感覚が日常なのは、それは息子にとって苦痛だなと、やっと息子のつらさがわかりました。IQが高いのは、いいことだと思ったこともあるのですが、話が合わない、関心事が合わない集団に日常的にずっといるっていう息子のつらさを初めて知った気がします」(純子さん)
そして、IQが高い人は、ほかの人よりもセンサーが敏感で、相手が何をしてほしいかを察知することに優れ、それに応えようとして疲れてしまうとも聞いた。
授業の内容は、都央さんにとって学びが多いとは言いがたいものだったという。「授業は淡々と受けて、教室にいればいいので楽だなと思う一方で、楽しい時間ではないのでつらい場所でもある」とこぼす。
学校でつらい思いをする都央さんを見て、入学や進級のたびに担任の先生へ都央さんの個性について手紙を書いて理解を求めた。幸いなことに担任の先生もギフテッドについて調べ、理解してくれる努力をしてくれた。スクールカウンセラーも理解を示し、相談に乗ってくれるという。純子さんは「集団生活や行事など学校でしか学べないこともあると思います。息子がやりたいことの時間も取りつつ、負荷はかけないように学校に行く日も作ろうという試行錯誤の中で今のスタイルになった」という。