一番ワクワク…3Dとプログラミングを独学
ただ、都央さんにとっては、周りの小学生のように週に5日、一日6時間の授業を受けることが「時間のロス」に感じてしまうこともある。「自分が興味のあることをしている時が一番ワクワクする」と言い、いくつかの夢中になっていることがある。
その一つが、3D映像をつくること。その様子を都央さんが見せてくれたことがある。パソコンで専用のソフトを開き、どのような絵をつくり出すか決めていく。1コマずつアニメーションの動きを設定し、動きや色を指定していくと、3D作品ができあがっていく。ソフトの言語は英語で、手早くマウスでクリックしていくため、一目見ただけではどのような操作をしているのか到底理解できなかった。複雑なボタンを何個も押して解説してくれるが、私は同じ操作をすることすら難しかった。都央さんは、自分で興味を持ち、YouTubeで外国の人が解説してくれる動画を探して独学で学んでいったという。
パソコンに向かって説明してくれている都央さんの目はきらきらと輝き、とても生き生きとしていた。学校に関することを質問した時とは全く違う表情だった。作曲した作品や過去につくった3D映像を見せてもらい、こんなにすごい才能が学校現場では評価されないもどかしさも感じた。
プログラミングも都央さんの得意なことの一つだ。21年に開かれた小学生向けのプログラミング大会では、小学4年で決勝に進出。一人暮らしの祖母のために考えた買い物アプリを発表し、特別賞を受賞した。翌年にも同じ大会で、5千件を超える応募作品の中からトップに選ばれた。AIが文章を作成するアプリをChatGPT(対話型AI)がリリースされる前に独自に制作し、決勝に進出した。
学校の授業とは別に、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学がギフテッド向けに開いている授業にオンラインで参加した。そのプログラムでは、座学で公式などを学ぶのではなく、実験や工作の中からそのメカニズムを学ぶ仕組みになっている。
ローラーコースターを制作する中で、物理のエネルギーについても併せて学ぶ。なぜローラーコースターの動きが維持できるのかなど、理由を体感しながら学ぶことができたという。九九やドリルなど、プロセスに意味がないものを覚えるのは苦手だという都央さんは、理由とともに仕組みがわかるこのプログラムがとても面白いのだという。このプログラムのテストで最優秀の成績を収めたとして賞状が贈られた。
都央さんは「学校に行ってない、サボっている、頑張っていないとか言われるのですが、自分なりに頑張っているんだというのを知ってもらいたい」と話す。
(年齢は2023年3月時点のものです)
文/阿部朋美
写真/朝日新聞社・ご家族提供
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