数値化されてわかった「生きづらさ」の一因
母は、まさにユウ君の一面を言い当てていると感じた。まさかこれほど高いIQが出るとは思っていなかったが、それ以上に、IQが高いことが生きづらさを引き起こす原因になっているなんて思いもよらなかった。母は「発達障害でしょうか」と聞いた。心理士も悩みながら「そう診断はできません。『2E(※)』ギフテッドに該当すると思います」と言った。
(※)「twice-exceptional」の略。「二つの特別」「二つの特別支援を要する」といった意味がある。
ギフテッド?うちの子が?母はふたたび驚いた。だが、そんな思いはすぐに打ち消した。ユウ君は、難しい計算を解いたり、複雑な漢字を書けたりするわけではない。成績も普通だ。独特な才能といえば、野鳥図鑑に載る670種を隅から隅まで記憶していたり、説明書を見ずにレゴブロックで小惑星探査機「はやぶさ」の形を組み立てたりといったことがあるぐらいだ。
ペンを持たせると鳥の絵をずっと描き続けるということもあるが、これがギフテッドというには少し大げさすぎると思った。
心理士には、ユウ君にどんな障害があるのかは詳しくはわからないと言われた。その上で、フリースクールや2E教育に力を入れる支援団体などを紹介された。ただ「無理に学校に行かせないでください」とも言われた。いつかは学校に戻ってくれるだろうと考えていた母も、このことを境に考え方を大きく変えた。検査によって初めてユウ君の生きづらさの一因が「数値」としてわかり、納得できたからだ。
「検査がなければ息子のことを理解できないままだったと思います。子どもの言うことを信じて寄り添うことが本当に大事なことだとわかりました。そのことは今でも自分に言い聞かせています」