凸凹のIQグラフが意味すること

知能検査と聞き、母は少しためらった。検査は無料だというが、所要時間は1時間から1時間半ほどかかり、検査する人とユウ君が2人きりになることを伝えられたためだ。内容は「図を見たり言葉を覚えたり、簡単なもの」と伝えられていたが、知らない人と話すことが苦手なユウ君は、予想通り嫌がった。

「わらにもすがる思いでした」と母。ユウ君を「どんなふうに支援したらいいかを見つけるためのものだよ」と説得した。1カ月後に検査を受けることになった。

検査の日は大雨だった。雨が地面にはねる刺激だけで「痛い」というユウ君。なんとか病院に着き、検査室に入った。

検査室から出てきたユウ君は、黙り、つらそうだった。母に泣きつき、帰宅しても食事せず、何もやる気が起きずにいる状態が1週間も続いたという。「まだこの時は息子の目の異常がよくわからず、検査がどんなに大変だったか私も想像できませんでした。今ではかわいそうなことをしてしまったとも思います」と振り返る。それでも、検査の結果により、母が知りたかったユウ君のつらさの原因がわかっていくため、母は「本当に大事な検査でした」と話す。

〈「ギフテッド」と呼ばれる人たち〉音の刺激で痛み、顕微鏡のように見えすぎてしまう目…才能と障害「二つの特別」を持つ少年が、“5度しかない視野”から見た世界_3

ユウ君の検査の数値は、2人の意向で具体的には示さないが、母によると、言語理解はIQ130を上回った。一方、知覚推理が平均を下回っていた。その差は40以上あった。

処理速度とワーキングメモリーは、平均より少し上だった。最高値と最低値の差が40以上あるのは珍しいという。四つの指標を折れ線グラフにして線で結ぶと、激しい凸凹になっていることがわかる。

これは何を意味するのだろうか。結果をもとに心理士から最初に言われたのは、「言語理解が高すぎる」だった。心理士によれば、差が40以上あれば、集団生活で生きづらさを感じることがある、と一般に言われているという。「もし(最も高い)言語理解が平均に近かったら、問題なく学校に通えていたかもしれないですね」と心理士は話し、こう続けたという。

「特に言語理解が高い子は、完璧を求める傾向があり、不登校になりがちです」