何年かすると棺が出されて燃やされる墓地…金を払えば免除

一緒に来た人たちは、他人の墓に腰を掛け、持ってきたお菓子を食べている。国が違えば、埋葬方法も、墓参りの仕方も違う。

叔父さんの眠る墓地の上下左右はまったく知らない人だ。きっと、他の墓参りに来た人たちも同じようにゴミを捨て、墓に腰を掛けているのだろう。

「何年かすると中から棺が出されて燃やされるんだ。場所が空いたら、また違う人が入る。もし出されたくなかったらお金を払わないといけない」

遺族が葬儀代を稼ぐために通夜で賭場を開くフィリピン。「金を払わないと棺が墓から出される」独特な死後のお金事情_4
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死んだ後も金がかかる。

よくよく見渡してみれば、屋根と柵が付き、まるで家のような墓地もある。金持ちは墓地も豪華だ。貧乏人は共同墓地で、さらに何年かしたらそこからも出されてしまう。

出稼ぎに行くフィリピン人の目的は、家族の生活を助けたい、裕福になりたいというものだが、大前提として、自分の大事な人たちが死なないように、という気持ちがある。

ただ贅沢がしたい、金が欲しいというだけではなく、幼い頃から貧しさゆえの「死」が身近にあり、大切な人達の命を守るための手段が、出稼ぎしかないのだ。

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『フィリピンパブ嬢の経済学』 (新潮新書)
中島 弘象
2023年6月19日
902円
240ページ
ISBN:978-4106110023
フィリピンパブ嬢との出会いと交際は、すったもんだの末に見事ゴールイン。これで平穏な日々が訪れるかと思いきや、妻が妊娠。新たな生命の誕生とともに二人の人生は新たな局面に突入する。初めての育児、言葉の壁、親族縁者の無心と綱渡りの家計……それでも「大丈夫、何とかなるよ」。異文化の中で奮闘する妻と支える夫の運命は? 話題作『フィリピンパブ嬢の社会学』に続く、抱腹絶倒のドキュメント第二弾!!
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