植田日銀新総裁発言に失望する外国人労働者
4月10日の日銀・植田和男新総裁の就任会見を見て、ガックリと肩を落とした人々がいる。技能実習生など、日本で働く外国人労働者たちだ。
失望のワケは植田新総裁が「続けるのが適当」と、これまで日銀が行ってきた異次元の金融緩和を継続とすると明言したためだ。技能実習生を受け入れる監理団体役員が説明する。
「金融緩和を続けるということは長期金利も0%前後に抑えられ、円安基調が続くということ。事実、植田新総裁の発言が伝わると、日米の金利差拡大が意識されて円が売られ、わずか一日で1円40銭も円安になった。こうなると技能実習生ら、外国人労働者は苦しい。円安が進んだ分、日本で稼いだ円をドルなどに換金して母国へ送金する際の金額が目減りしてしまいますから」
栃木県内の食品加工工場で働くインドネシア人女性もこう嘆く。
「21年4月の円ルピアレートは1円=134ルピアでした。それが22年10月に1ドル150円台の円安になった時は1円=103ルピアに。1ドル133円台と円安が一服した現在でも1円=111ルピアほどにしかなりません。送金の手数料を含めると、母国の家族に送るお金は円安が進む前に比べて20%近くも目減りしています。少しでも円の高いタイミングで送金したくて、お昼の休憩時間に円とインドネシアルピアの為替レートをスマホでチェックしています」
外国人労働者問題に詳しい「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平理事もこう指摘する。
「外国人労働者の悩みは円安による母国送金額の目減りだけではありません。旅費や手数料などの来日費用を借金でまかなった場合、円安が進んだ分、借金返済額が膨らんでしまうんです。
たとえば、カンボジアからの技能実習生は来日前に保証金として2500ドルを国に納めるのですが、手元資金からポンと払える人は少なく、ほとんどが借金をして納付しているのが実情です。この借金は日本で稼いだ円で返済することになりますが、円安が進むとその分、返済額がかさんでしまうというわけです」