海外の作品にも積極的に参加

芸名の由来は千代田区役所勤務だったから…カンヌでその名を世界に轟かせた役所広司。日本映画界の至宝のキャリアを振り返る−「似た役柄はひとつもない」_3
2006年、コンペティション部門に出品された『バベル』を引っ提げカンヌ国際映画祭に出席。(役所の右隣から)ケイト・ブランシェット、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、菊地凛子
ロイター/アフロ
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2000年代以降、海外進出を果たす日本人俳優が続々出てくるが、役所広司もロブ・マーシャル監督『SAYURI』(2005)、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督『バベル』(2006)、フランソワ・ジラール監督『シルク』(2007)といった海外作品に出演している。ただし、そのラインが継続しなかったのは、日本の映画製作サイドが彼を手放したくなかったからかもしれない。

彼自身、『ガマの油』(2009)で監督デビューを果たしたり(監督第2作も待望しています)、三池崇史監督『十三人の刺客』(2010)『一命』(2011)、杉田成道監督『最後の忠臣蔵』(2010)、三谷幸喜監督『清須会議』(2013)、小泉堯史監督『蜩ノ記』(2014)『峠 最後のサムライ』(2022)など、時代劇映画の出演に俄然積極的なのも、混迷を続ける昨今の日本映画界の中で、自分が一体何をやれるかに腐心し続けていることの証左ではないか。

今年は『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2011)以来のコンビとなる成島出監督(彼は『大阪極道戦争 しのいだれ』『シャブ極道』の脚本家でもあった)の『ファミリア』(2023)『銀河鉄道の父』(2023)に続けて主演し、改めてその存在感を広く映画ファンに示してくれた。

そこに来て、今回のカンヌ男優賞受賞の吉報である。
こうなると一刻も早く『PERFECT DAYS』(2023/公開日未定)を拝見し、世界のYAKUSHOの好もしい貫録を、大いに堪能させていただきたい。

文/増當竜也

役所広司

1956年生まれ、長崎県出身。『KAMIKAZE TAXI』(1995)で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。『Shall we ダンス?』(1996)、『眠る男』(1996)、『シャブ極道』(1996)で国内主演男優賞を独占。東京国際映画祭主演男優賞を受賞した『CURE』(1997)、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『うなぎ』(1997)など、国際映画祭への出品作多数。2012年、紫綬褒章を受章。近年では『三度目の殺人』(2017)、『孤狼の血』(2018)、『峠 最後のサムライ』(2022)、『ファミリア』(2022)などに出演し、『すばらしき世界』(2021)では、シカゴ国際映画祭最優秀演技賞、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞を受賞。今後は2023年7月期TBS日曜劇場「VIVANT(ヴィヴァン)」に出演予定。ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』(2023)でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞。日本を代表する俳優として活躍している。