登場人物の視点によって事件の見え方が激変

【ネタバレ注意】「怪物だーれだ」カンヌで絶賛された映画『怪物』。劇中で描かれる“怪物”の正体を徹底考察する_1
(右から)安藤サクラ演じるシングルマザーの麦野早織、黒川想矢演じる息子の湊
©2023「怪物」製作委員会
すべての画像を見る

本作のキャッチコピーであり、予告編で子どもたちが発する「怪物だーれだ」という言葉。当記事では映画の内容に触れながら、怪物の正体を考察してみたい。多くのネタバレがあるので、『怪物』をまだご覧になっていない方はご注意を。

是枝監督が他者に脚本を委ねるのはデビュー作『幻の光』(1995)以来で、これまでは『万引き家族』(2018)を含め自ら脚本も執筆してきた。坂元は是枝が今、一番リスペクトしている脚本家だ。海外でもリメイクされ評価の高いTVドラマ『Mother』(2010)を大ヒットさせた坂元は、大人目線と子ども目線の両方から物語を紡ぎ出す達人。『怪物』(2023)の脚本を担当するのが坂元であることには大いに納得できる。

『怪物』は、大きな湖のある郊外の町を舞台に、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの小学校教師、孫を亡くしたばかりの校長、そして無邪気な二人の子どもたちという登場人物のそれぞれの視点から、学校で起きた“事件”を描き出す。彼らの主張は食い違い、次第に社会やメディアを巻き込み大ごとになっていく。