まず、6月13日夜の会見終了直後に筆者が官邸報道室に送った事後質問は以下の通り。
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入管法改悪について、質問します。強行採決直前の先週、国会前では5千人前後が参加する大規模な反対デモが複数回開かれ、今回の改悪で命の危険に晒される当事者たちが廃案を訴えました。そのデモの中継映像はインターネットで公開されて誰でも容易に観れますが、特技が「聞く力」であると公言されている総理はこうした反対デモの当事者たちのスピーチを1つでも聞いたのでしょうか?
聞いたのであれば、どのような話を聞いて、何を感じたのでしょうか。
聞いていないのであれば、なぜ聞かないのでしょうか。
出典:筆者 事後質問(2023年6月13日)
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質問の意図としては、岸田総理本人の基本的な振る舞いにあえて焦点を絞った。法的根拠が崩れたことを始め根本問題は他にも多々あったが、そうした法改正の正当性を問うても国会答弁同様のゼロ回答が返ってくることは目に見えているため。また、「入管法改正」ではなく、より実態に近い「入管法改悪」とあえて明記し、官邸報道室が質問内容をウェブサイトで公開する際、この表現を丸めてしまうのかどうかを確認する狙いもあった。
今回も繰り返された質問の改ざん
6日後(6月19日)、官邸報道室を通して岸田総理の回答が届く。
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【犬飼淳氏(フリーランス)】
入管法改正について
○ 今般成立した、出入国管理及び難民認定法の改正法は、出入国在留管理制度を、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留 管理を実現するバランスのとれた制度とし、日本人と外国人が互 いを尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現のための基盤 を整備しようとするものです。
○ 今回の改正について様々な御意見があることは承知していま すが、入管法の改正内容及び重要性について、広く国民の皆様に 御理解をいただくべく、法務省・出入国在留管理庁において、引 き続き丁寧に説明していくことが重要であると考えています。
出典:岸田総理回答(2023年6月19日)
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出典:官邸報道室から筆者にPDFファイルとして届いた岸田総理回答(2023年6月19日)の実物
懸念した通り、筆者の質問は「入管法改正について」という極めて曖昧な9文字に省略。文字数の都合で省略したという言い訳も通用しないことはないが、少ない文字数であっても「入管法改悪反対デモのスピーチを聞いたか」(19字)のように質問の大意を伝えることは十分可能であり、質問内容を曖昧にするために大幅に省略したと判断せざるを得ない。
さらに、筆者が質問文で意図的に用いた「入管法改悪」は「入管法改正」に変更。もはや「改ざん」と表現して差し支えないほどの省略と言える。
回答の中身は、1段落目では国会答弁と同様に表向きの導入根拠を繰り返しただけ。2段落目では「丁寧に説明していく」というポーズのみ。要は、「反対デモの当事者のスピーチを聞いたのか」という筆者の素朴な質問に一言も答えていない。仮に岸田総理が聞いたのであれば「聞いた」と答えるはずなので、「聞いていない」が答えなのだろう。
ところが、同日に首相官邸ウェブサイトで公開された質疑では、回答時と同様に筆者の質問は大幅に省略されたまま掲載され、あたかも岸田総理がそれなりに質問に回答したように見える。しかし、ここまで説明した通り、実態は全く異なるのだ。
ちなみに、こうしたミスリードは同じく入管法改正について質問した前回(今年2月24日) 首相会見の事後質問でも発生している。
*詳細は筆者がtheletter「犬飼淳のニュースレター」で公開した「【独自】入管法改正に正当性はあるのか。岸田総理の回答結果」(2023年3月6日)参照
首相会見をめぐっては他にも問題(5類引き下げ後も人数制限だけは都合よく継続する、予定調和な質問をする内閣記者会ばかり指名される 等)があり、国民の知る権利は侵害され続けている。さらに、事後質問についても質問だけ都合よく省略することで、総理があたかも質問に回答したように装う小細工がまかり通っている。
文/犬飼淳