誰かの役に立つのなら
寄付されたランドセルで学校に通った子どもたちのなかには、その後、医者や助産師、学校の先生になるなど、夢を実現できた子たちもいる。役目を終えたランドセルが異国の子どもたちに新たな喜びや希望を与えたり、将来への夢につながるきっかけの一つになったりしていることは間違いない。
一方で、ランドセルの寄付には「贈る側の想い」が強いという特徴もあるという。
「ランドセルの寄付と一緒にメッセージや写真を送ってくださるお子さんや保護者の方もたくさんいます。それだけランドセルというものに思い入れがあるのだと思います。
卒業してからしばらくは大事に保管していたけれど、ジョイセフの活動を知り、『大切にしていたランドセルが、ほかの誰かの役に立つのなら』と、寄付を決めたという方も多いですね」
親やお友達からジョイセフの活動を聞いて、自発的に寄付をしたいと決める子どももいれば、最初から「小学校を卒業したら、ランドセルをアフガニスタンに贈るんだ」と決めて6年間大切に扱い、とてもきれいな状態で寄付してくれた子もいるのだそう。
「ランドセルを買ってくれたおじいちゃんやおばあちゃん、両親を交えた家族会議をして、寄付を決めたというご家庭も多いようです。寄付するかどうかの最終決定者は子どもというご家庭も多く、すばらしいなと思いますね」
古くても、記名があっても
ジョイセフのランドセル寄付の方法は、自宅から宅急便で倉庫へ発送する、横浜の倉庫へ直接持ち込むほか、ジョイセフが主催するイベント会場へ持参する方法もある。今年4月には、全国のイオンで直接ランドセルの持ち込みができる共同プロジェクトも実施された。
いずれも輸送費の1800円(非課税)がかかり、自宅から発送する場合は、輸送費に加えて送料の負担も発生する。「寄付だからお金はかからない」わけではない点には注意したい。なお、輸送費は現金以外に、書き損じはがきでの代用も可能だ。
寄付するうえで「古い・汚れたランドセルは受け取ってもらえないのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、年数が経過したランドセルでもOKで、留め具の破損や著しい皮の劣化などがなければ寄贈の対象となるため、あまり心配することはなさそうだ。
ただし、「豚革」のランドセルは、いかなる状態のものでも寄付できない。ランドセルの裏蓋側に毛穴があるのは、豚革の特徴だ。近年では流通が減ってきているが、宗教上の理由から現地に送ることができないことも知っておきたい。
「シールが貼ってある、マジックで名前や寄せ書きが書かれているといったランドセルも、無理にはがしたり消したりせず、そのまま寄付していただけたらと思います。現地の子どもたちからすると、そういったものもアクセントになって『かわいい』『おもしろい』と思ってもらえるので、ランドセルとして使える状態のものであれば大丈夫です。
また、寄付は通年で受け付けていますので、小学校を卒業してからすぐに寄付していただかなくても問題ありません」
寄付できないランドセルの例は、公式ホームページ上でも写真付きで紹介されている。事前に確認しておくと安心だ。
なお、店舗での寄付以外では、ランドセルのなかにノートや鉛筆、カラーペンや色鉛筆といった未使用の学用品を詰めて贈ることも可能だ。
また、ランドセルを寄付する際には、こんなことにも気をつけたい。
「ときどきあるのが、親が『もう使わないからいいだろう』と、子どもに黙って寄付してしまい、子どもとトラブルになってしまうケースです。寄付していただいてから『やっぱり返してほしい』と言われても、膨大なランドセルを保管している倉庫から探し出すことは現実的には難しいので、必ず、事前にお子さんと話し合っていただけたらと思います」