ジャック・マーに帰国をうながした中国政府
そんな中で、2023年3月、馬雲(ジャック・マー)が忽然と浙江省杭州に出現した。杭州市はアリババ本社があり、上海とは新幹線で繫がって45分。
アリババ創業者のジャック・マーは1年以上の海外旅行の後、中国本土に戻って杭州市に彼が設立した学校を訪れた。2017年にアリババが資金提供した、幼稚園から高校までをカバーする私立学校の教師と生徒と、「チャットGPT」などについて話し合ったとか。
馬雲はスペイン、オランダを彷徨い、農業技術開発センターを視察し、またイスラエル、米国に旅行し、半年にわたって滞在した日本では、近畿大学のマグロ養殖実験場を見学しており、ビル・ゲーツ同様に次世代農業技術に異様な興味を示した。
馬雲に帰国をうながしたのはどうやら中国政府で、『自由時報』に拠れば、民間企業の新しい分野の活動を取り締まっていながら、他方で中国は世界に向けて、「民間企業を支援する」と獅子吼している。この文脈から中国政府はジャック・マーを政府と民間部門の評判を修復するための最良の候補者と見なしたのだ。
起業家や世界の投資家の間で北京を不信にする可能性
ボーアオ会議(23年3月、海南島)で李強首相は「グローバル路線で中国が成長する方針には変わりない」と打ち上げ、海外企業の進出継続をうながした。アップルCEOのティム・クックも訪中し、就任後初めて、李首相と会見した。
事情通に拠れば、新首相の李強が「民間企業への確固たる支援を強調するために、ジャック・マー(馬雲)が中国に不在であることは、起業家や世界の投資家の間で北京を不信にする可能性があるため帰国をうながした」と分析している。
海外流浪といえば、タイのタクシン・シナワット元首相だろう。タクシンはたびたび日本にも来ているが、頻度多い訪問先は香港。ここで次女の貝東丹(ペイトンタン)と会った。彼女は5月の総選挙に立候補を予定し、将来の首相候補のひとり。タクシンは東京で共同通信とのインタビューに応じ、16年間も海外を流浪しているが、近くタイに戻る可能性があると述べた。
タクシンは2006年の軍事クーデターで追放され、英国と日本で暮らした。帰国すれば2年の懲役を宣告されており、選挙結果を待って恩赦を狙っての帰国となりそうだ。
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