人は何かの行動によって、
その都度自分の中に新しい自分ができている

自分の中に生まれた新しい自分というものは決して古い自分から消えてなくなるものではない。上書きされるものでもない。一度取り込んだ、誰かによって生まれた「新色」の自分はずっと自分の中にある。だから、今ここで出会った誰かによって取り込んだ「赤色」と10年前、20年前に誰かによって、もしくは何かを読んだり、体験したりすることによって生まれた「旧色」とが反応して、「新結合」する場合もある。

ずっと忘れていた感情が、ある人と話をすることによって蘇ることとかあるだろう。ずっと聴かなかった思い出の曲をたまたま町で聞くことによって、当時の自分の状況を思い起こすこともあるだろう。

そうやって、人は何かの行動によって、その都度自分の中に新しい自分ができているはずなのだ。それが自分の中の多様性であり、決して自分はひとつの自分ではないということを理解することが大切だ。

一期一会の人のつながりでも、たった一度の経験でも、それを通じて自分の中に新しい自分が生まれたのだと思えれば、出会った人、経験したことのすべてに感謝の気持ちが湧いてくるだろう。

自分の写真や声の録音を嫌う人ほど「俺は俺のことがわかっている」と勘違いしている…自称ブレない男の面倒臭さとうさん臭さとは_3
すべての画像を見る

誰に対しても主張も態度も何も変わらない人間なんて独裁者

多様性の時代だのと口ではいいながら、その人自身がまったく多様性を認めないという矛盾した人物をよく見かける。それは、そもそも自分の中の多様性をまず認められていないからだと思う。

人生とは、長い年月に及ぶ経験や人とのつながりを経て、自分の中に新しい自分を生成していく旅なのだ。その自分の中にたくさんいる自分というものの存在を理解していればしているほど、自分というものはわからないということになるわけだが、それでいいのである。わかったつもりになって、勘違いして噓の自分を生きるよりよっぽどマシである。

大体、人間なんて、環境が違えばその環境に応じた人間にならざるを得ないし、相対する人間によって態度を変える必要だってある。カメレオンでいいのである。誰に対しても主張も態度も何も変わらない人間なんて独裁者である。

#1『未婚者が既婚者より幸福度が低い傾向はなぜおきるのか…「結婚したらしあわせになれる」と思っている人は結婚できない』はこちらから

#2『ネット記事での「働かないおじさん」「子ども部屋おじさん」ワードの多用…おじさん叩きが死ぬほどバズり、読み手もファクトを気にしない理由』はこちらから

#3『親ガチャの真実…身長・体重は9割、知能・学業成績も5、6割は遺伝という衝撃! 生まれてくる時期や場所、親は選べない。けれどいつまでもその場所にいるわけではない』はこちらから

『「居場所がない」人たち: 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論 』
(小学館新書)
荒川和久 
2023/3/31
1034円
224ページ
ISBN:978-4098254439
居場所がなくても幸福と思える生き方とは?

2040年には、独身者が5割に。だれも見たことのない、超ソロ社会が到来する。
ますます個人化が進む中、私たちは家族や職場、地域以外に、誰と、どこで、どうつながれば、幸福度を高められるのか?
また、親として、人生の先輩として、これからその時代を生きる子どもたちに何を伝えられるのか?

家族、学校、友人、職場、地域・・・・安心できる所属先としての「居場所」は、年齢を重ねるごとにつくるのが難しくなり、時に私たちは「居場所がない」と嘆く。
また「そこだけは安心」という信念が強すぎるがゆえに、固執し、依存するという弊害も生まれる。

では、居場所がなく、家族や友達をもたず、一緒に食事をする相手がいないのは、「悪」なのだろうか?常に誰かと一緒でなければしあわせではないのだろうか?

社会の個人化も、人口減少も、もはや誰にも止められない。私たちに必要なのは、その環境に適応する思考と行動だ。著者が独身研究を深掘りした先に示すその答え=〔接続する〕関係性、〔出場所〕という概念とは?

結婚していてもしていなくても、家族がいてもいなくても、幸福度を上げるための視点とヒントに満ちた一冊。
amazon