卒業制作の漫画で手塚賞受賞
――高校卒業後、美術系の学校に進学されたそうですね。
地元が群馬なんですけど、桐生にある短期大学のアートデザイン学科で、漫画を描いたり、イラストとか絵画を学んだりしました。
卒業制作で描いた漫画を手塚賞に送ったら、それで賞をいただくことができました(漫画『クイモドシ』にて第95回手塚賞準入選受賞)。
――その選考で岸本先生がかなり推してくれたそうですね。
嘘みたいだ、夢を見ているんじゃないか、と思いましたね。その号のジャンプを担当編集さんから受け取った瞬間を今でも覚えています。東京から帰る電車の乗り換えの待合室で受賞者発表のページを見たら、岸本先生からのお言葉が書いてあって。
審査員の先生方による「今回はこんな回でした」みたいな総評が載っている欄があって、そこで特定の作品について言及されるのはあんまり見たことがなかったんですけど、そこにも『クイモドシ』のことを書いてくださっていて、衝撃でした。
――岸本先生に初めて会ったのはいつですか?
手塚賞授賞式の時ですね。第一声で「めちゃくちゃ絵上手いよ」とおっしゃってくださって、すごくビビりました。まだコロナ禍ではなかったので、握手もさせていただいて。
ちょっと気持ち悪いんですけど、応募に向けて夜中に漫画を描いている時とか、「これを手塚賞に送って受賞なんかしちゃったら、岸本先生に会えるんだ」ってリアルに想像したら、涙が出ちゃったりしていたんですよ。でも実際に会ったら涙は出ませんでした。当時の自分の想像力が怖いです(笑)。
スマホのロック画面のパスワードも、岸本先生と初めて会ったその日付をもとに組み合わせています。
――それは言っちゃって大丈夫ですか(笑)。
大丈夫です。もう本当に自分のアイデンティティはすべて岸本先生から派生しているんで。『AKIRA』も『無限の住人』も、あとProduction I.Gの『攻殻機動隊』とか、『人狼 JIN-ROH』とか、すごく大好きで。本当に岸本先生は僕の根源ですね。
取材・文/佐藤麻水