「スマホで一番読みやすいマンガ」とは
――今回、「ジャンプTOON」という縦読みマンガへのチャレンジが発表されました。立ち上げの背景を教えてください。
浅田(以下、同)縦読みマンガの世界では現在、いろいろな種類のヒット作が生まれています。たとえばREDICE STUDIOが手がけた『俺だけレベルアップな件』のように、韓国のスタジオ発の作品もありますし、一方で集英社でも作家が一人で描いた『氷の城壁』(阿賀沢紅茶)が大ヒットになりました。また最近「少年ジャンプ+」でも読み切りの縦読みマンガ『大巨人』(原作:ト城、漫画:肥田野健太郎)が注目を集めるなど、いろいろなタイプの作家さんが現れてきています。
縦読みマンガは、スマホベースで読みやすいマンガの発表形態です。スマホに合わせるため縦にスクロールしていく読み方になり、紙の印刷を想定しないのでフルカラーになった。ここにビジネスモデルとして、アプリ「ピッコマ」などに代表される「待てば無料」の1話単位の課金形態が組み合わさっています。
「スマホで一番読みやすいマンガはどんなものなのか」という問いに対して、様々な立場の才能が答えを出そうとしている。その人たちと一緒にマンガを作りたいという希望から、縦読みマンガの事業に参入することを決めました。一言で言えば、「正しい時に、正しい場所にいよう」という思いです。
――「正しい時」とのことですが、今この瞬間をどのようなタイミングとして捉えているのでしょう。
ビジネス的には、現在の日本国内における縦読みマンガの市場は約500〜600億円と見込まれています。今の電子コミック市場が約4500億円なので、そちらと比較しても存在感が大きくなってきていますが、まだ若い市場です。僕自身の感覚としても、20代の若い社員から好きなマンガの話を聞いていると、縦読みのマンガのタイトルが上がってくるようになったなと実感します。若い世代が本気で面白がって読み始めているタイミングだなと。
僕自身は紙かつモノクロのマンガ時代の編集者ですが、縦読みマンガにはすごくワクワクしています。縦読みマンガの特徴のひとつはフルカラーですが、フルカラーだからこそできる表現もありますし、プロダクション制や技術の発展によってフルカラーマンガを作りやすくなっている局面だと感じています。
いろいろな作品を読む中で、たとえば韓国のウェブトゥーン『ザ・ボクサー』(JH)には衝撃を受けました。もともと作者のJH先生は、『水平線』という、作家性あふれる尖ったマンガを発表していたんですが、『ザ・ボクサー』はそこからぐっとエンターテインメントに寄せた連載作です。こういった作品発表の流れがあるんだと、あらためて感じました。
――新しい作家がたくさん生まれていて、彼らの作品を楽しむ読者も急増しているタイミングであると。
誤解のないように申し上げたいのは、今回の縦読みマンガへのチャレンジは「マンガ事業をピボット(方向変換)する」のではなく、「マンガ事業を拡張する」ためのものです。横開きのマンガの才能をもっている方々とは、今までも、これからも、変わらず一緒に仕事をしていきます。マンガ事業もライツ事業も好調だからこそ、まだ出会っていない新たな領域の才能と一緒に仕事をするための挑戦をしたいと考えています。