ひどい対応を受けた当事者だからこそ
住宅弱者問題を解決したい
――キョウさんは、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」内で、住宅弱者問題を解決するための「FRIENDLY DOOR」事業を立ち上げています。そのきっかけは何でしょうか。
留学生として来日した親族が賃貸住宅を借りられなかったことがきっかけです。私は中国生まれ、日本育ちの在日外国人です。学生のとき、中国から留学してきた親族の住まい探しを手伝ったのですが、外国籍というだけで不動産会社に物件案内を何度も断られるという経験をしました。
なんと日本人の保証人がいても断られてしまうのです。国籍が違うだけでこんなにも無情な対応をされるのか、と衝撃を受けました。
よくよく自分の生い立ちを振り返ってみると、幼少期はずっとUR都市機構が運営する賃貸住宅に住んでいて、両親は不動産会社で物件を探していなかったため、子どもながらに勝手に「家は抽選で当たるものなのかな」と思い込んでいました。今思うと、民間の不動産会社ではなかなか家が借りられなかったから、私たちの家族にはUR賃貸という選択肢しかなかったのだと思います。
「なぜ中国籍だからといって、家が借りられないんだ!」そんな思いを抱え、住宅弱者問題の解決に共感し、挑戦を応援してくれるLIFULLに入社し、2019年11月に「FRIENDLY DOOR」事業を立ち上げました。
――キョウさん自身も、家を借りられない経験があるのでしょうか。
社会人2年目で初めて一人暮らしをしたときは特に断られませんでしたが、その次に引っ越した際はオーナー審査で断られましたね。私は外国籍といっても日本育ちだし、何より一部上場企業で安定した職に就いているのにダメなのか……と思いました。
また「FRIENDLY DOOR」を立ち上げた当時の同僚がシングルマザーだったのですが、彼女もシングルマザーだからと、審査で厳しい対応を受けた経験があります。住宅弱者問題はとても身近な社会課題なのだと実感しました。