「FRIENDLY DOOR」は将来"なくなるべき”事業
――事業を展開していくなかで、苦労した点を教えていただけますか。
そうですね……。はたから見たら、立ち上げ当時の社内プレゼンやリリースまでの道のりは一筋縄にはいかないことのほうが多かったですが、もう覚えていないです(笑)。
この住宅弱者問題は、最初は外国籍だけの課題だと思っていました。でも事業を立ち上げるなかで、先ほど挙げたシングルマザーの同僚を含めて、実は多くの人がそれぞれのハードルがあって、住まい探しで傷ついていることを知って。
事業を前に進める苦労よりも「この問題を解決しないと世の中はよくならない。だから早く変えなきゃ!」という思いのほうが強かったので、それほど苦労だと認識していなかったのかもしれません。
――では、事業を運営するなかでの「直近の課題」を教えていただけますか。
最近「これは課題だな」と感じたのは、ある不動産会社でLGBTQ研修を開催した際に「私たちは性別やジェンダーで差別等はしていないし、どんなお客様にも対応しているので、なぜ研修が必要なのか」という声が上がったことです。
住宅弱者に対してきちんと対応できているかは、対応を受けた当事者本人しかわからないこと。この声を上げた方々のように「私たちはきちんと対応できている」という認識で止まってしまうのは、接客を行う上でとても危険なことです。
それに対して私たちができるのは、「FRIENDLY DOOR」に参画する不動産会社が、住宅弱者に対して適切な対応ができているかを可視化することです。今後は、不動産会社ごとの対応の特徴や対応実績などを掲載できるようにしたいと考えています。
――最後に「FRIENDLY DOOR」の今後の展望を教えてください。
「住宅弱者というだけで断られない世界をつくること」を目標に、まずはLIFULL HOME'Sに掲載いただいている3万近い不動産加盟店のうち、1万店舗以上に参画していただき、住宅弱者の選択肢が少しでも増えるようにしたいと思います。
また、不動産会社が「住宅弱者に関して取り組みたいから『FRIENDLY DOOR』と協働しよう」と思ってもらえるような存在になりたいですね。
そして10年後には「FRIENDLY DOOR」の世界観が当たり前になって、誰も断られることがなくなる社会にしたいです。そうすれば、このサービスは必要ありませんから。今後も「FRIENDLY DOOR」がいらなくなる世界を本気で目指していきます。
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