2世の多くが小学校入学前までにムチ打ちを経験
エホバの証人では「鞭打ち」が推奨されていた。「JW児童虐待被害アーカイブ」が現役信者と元信者に行ったアンケートでは、217人中、「鞭打ちされ始めた年齢」は「3歳〜小学校入学前」が98人と最多。ついで「3歳未満」が64人、「小学生」が45人と、低年齢に集中。また、「鞭打ちの終期」は「小学生(高学年)」74人、「中学生」が68人と、中学入学前後に集中している。こうした環境が、咲里栄さんが脱会を考える理由になっていく。
「6歳くらいから、エホバの証人から抜けたいと、ずっと考えていました。だって学校は楽しかったし学校では叩かれない。勉強も楽しかったから」
母親から鞭打ちを受けたという咲里栄さんだが、アンケートでも鞭打ちを受けた相手は「母親」が圧倒的に多い。また、信者の親にもよるが、読書や観られるテレビ番組、趣味は制限されていた。咲里栄さんの場合はどうだったのだろうか?
「母親は主体的に厳しくしていたと思います。私の場合、お利口な信者を演じていたので、教義に従わないという理由よりも、嘘をついたとか帰りが遅いといった理由で鞭を受けていました。門限である夕方の5時を過ぎて公園で友達と遊んでいて、遊びたい欲が勝ってしまったときなどです」
どんな理由であれ、鞭で叩かれるのは体罰であり、身体的虐待だと思われるが、咲里栄さんは虐待との認識は薄いようで、受け入れているように話した。姉が叩かれる姿を見て、どうしたら自分は叩かれずに済むかを学んでいった面もあるようだ。
「教団は信者自身の選択としながら様々な規律の種を蒔いています。それによって生まれる、家族ごと、会衆ごとに違うルールが、宗教2世問題をよりややこしくしている」(綿和代表)という。
「吉本ばななの小説や宇多田ヒカルの音楽など、母が好きだったものは楽しんでも大丈夫でした。基本的に、性的、残虐な描写がある作品、また魔法使いや妖怪、妖精、架空のものが登場するファンタジー作品はNGでした。なので『ポケットモンスター』『アンパンマン』『美少女戦士セーラームーン』は我が家ではダメでした。ただ私の名前は『魔法使いサリー』からとったらしいです(笑)。例外として、『名探偵コナン』は、父が家を出ていく前に買っていたものなので、母は許してくれました」
咲里栄さんは高校を卒業するまで信者として過ごし、実家で忍耐の生活を続けていた。家出などで反抗することはなかったのだろうか。
「好きな男の子には隠れてバレンタインのチョコレートをあげましたし、彼氏ができても徹底的に隠していました。バレると叩かれますから。母は『もしエホバの証人を抜けるなら家の柱に縛り付ける』『エホバから離れることがあったら監禁する』と脅すようなことを言っていました。支配下に置くためです。だから私は高校を卒業して働くことを選びました。働いて一人暮らしをすれば、楽になれると思ったんです」