「日本の本質的な問題は2つしかない」
大前 同世代よりも、なるべく年下や若い世代と時間を過ごしたいと心掛けています。僕は今でも毎日、酒を一升飲むし。「人にやさしく、自分に厳しい」がモットーなので、若い人に頼られるとうれしいものです。それにしても、アイスタイルがアマゾン・ドット・コムと提携したのは一つの快挙だったね。
最近は大企業には興味がない。トップに会うと、19世紀に戻ってしまった感じがするし、僕の話を半分も理解できない。『企業参謀』という本を昔書いたが、そういう外部の人間を使わなければいけないのに、副社長や常務など近くにいる人の話しか聞かないなど、感覚がずれまくっている。
小野里 大前さんは、「日本の本質的な問題は2つしかない」とおっしゃっていますね。
大前 その通り。一つは、教育だ。世界で指導要領を使って教えているのは、日本と全体主義の国しかない。指導要領に基づいた授業をすれば補助金を出してくれるのだが、ビジネス・ブレークスルー大学院大学では認可はもらっているものの、指導要領に従わないので補助金ゼロで運営している。
AIが人間の知性を超えていくシンギュラリティの時代になっていくといわれている。人間にしかできないことを教えていかなければならないのに、工場制時代の大量生産・大量消費みたいなことしか教えていない。シンギュラリティになったら、即死ぬような人しか育てていないのはおかしいでしょう。
もう一つは、統治機構の問題だ。地方自治といいながら、全体主義的な統治を行っている。憲法にも地方自治と書いてあるが、実際には国が決めた範囲の中で地方公共団体が運営していくというものになっている。少なくとも道州連合制にしたら日本は8つになり、競争が起こり、次の気運が出てくる。今は競争相手がいないので、「内向き」「下向き」「後ろ向き」の三拍子がそろってしまっている状態だ。