ラジオは最も“人”が出るメディア

山本圭壱に「おい、ブタ!」 リスナーとの新たな関係性を築いた極楽とんぼ“伝説ラジオの番組”の革新性_3
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加藤 今のラジオって自由度がなくなってるの?
宮嵜 あのころと比べたらなくなりましたね。radikoのタイムフリーもSNSも便利ですけど、誰でも切り取ってSNSに上げられるので、「実際に聴いてない」「深夜だから」という言い訳はもう一切できないですし。そのぶん、守りに入る人は守りに入るし、あんまり変わってないのはおぎやはぎぐらいだと思います。
加藤 まあ、それはしょうがないよ。できないことも多いだろうし。
宮嵜 今はradikoのアプリがあるから、スマホの中にラジオが1台あるのと変わらないじゃないですか。だけどスマホの中にはNetflixもあるし、YouTubeもあるし、音声アプリもあって、強敵がメチャクチャいる。普通に考えたらラジオは選ばれないんじゃないかって思ったりするんですけど、ラジオを選ぶ人は一定数いますよね。なぜみんなラジオを選んで聴いているんだと思いますか?
加藤 自由度が高い分、ラジオってその人が出るよね。映像のあるテレビがあとから生まれて、凝った企画をどんどん進めていったから、反対にラジオが衰退したわけでしょ。でも、そのテレビがある程度マックスの所までやるべきことをやっている状態になって、「テレビってこういうもんだ」というのをテレビ側で決めちゃってるから、逆にラジオに戻ってきていると思う。結局、時代は回るから、今度はテレビがどうなっていくのか気になるね。ラジオもスポンサーがいなくて、もうダメだって時代もあったから。ラジオは緩い中でもずっと演者に「覚悟させる」ことをやっていってほしい。テレビではみんな保険を打つから。
山本 今はコミュニティFMとか、ものすごくいっぱいラジオ局があるじゃない? 聴こうと思えば、商店街のちょっと話上手のオジサンが2時間喋っている番組まで聴けちゃう。キー局でやっている番組も含めて、そのときの肌感覚だったり、状況だったりも伝わってくるから、皆さんに寄り添えるものになりつつあるのかなと思うんだよ。知らないオジサンのラジオを50人でも100人でも200人でもずっと聴いている方は聴いているんで、みんな欲しがっているのかなって感じる。
宮嵜 加藤さんも山本さんも言うように、ラジオはホントに素が出るし、人柄や人間性みたいなところが出ちゃうものだと僕も思います。人柄が垣間見えるメディアって他にあんまりないなって。
加藤 ないね。テレビだと今はリスクヘッジもちゃんとできてるから。まあ、ラジオもできているんだろうけど、でも絶対こぼれるよね。
宮嵜 「あ、こいつあんまりいいヤツじゃないな」みたいなところすらわかっちゃうというか。そういう“人(ニン)”が出るメディアだと思うから、そこが今となっては強みになってるのかなって感じますね。おふたりはまさに人で勝負している感じがします。『吠え魂』のころを思い返しても、今でもそうですけど。今日はお会いして、あらためて素っ裸で闘っていらっしゃるのはカッコいいと思いました。
加藤 俺らは他に武器がないからね(笑)。



文/宮嵜守史 写真/shutterstock

TBS『JUNK』名物プロデューサーが「番組づくり」の極意を学んだ芸人とは? 寝ている妻への検証企画や超ヘビーリスナー「定吉さん」いじりも

ラジオじゃないと届かない
宮嵜 守史 (原著)
山本圭壱に「おい、ブタ!」 リスナーとの新たな関係性を築いた極楽とんぼ“伝説ラジオの番組”の革新性_4
2023/3/22
¥1,760
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 384ページ
ISBN:978-4591174838
【内容紹介】
日常の中に無限にある「楽しみ」の中で、ラジオにしかできないことってなんだろう? TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーのラジオに捧げた25年が詰まった初の書き下ろしエッセイ。ラジオとの出会いから、プロデューサーになるまでのエピソード、人気パーソナリティたちの魅力まで。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、アルコ&ピース、パンサー向井慧、ヒコロヒーとの読み応え抜群のロング対談も収録。

【本文より抜粋】
世の中から見たらこぢんまりとした業界だけど、聴く人の心をしっかり掴むメディアだ。他ジャンルとの優劣を比較するのではなく、ラジオ独自の個性がどこかにある。ラジオだったからできたこと、ラジオじゃなければ伝わらなかったことが、きっとあるはずだ。

この『ラジオじゃないと届かない』では、エッセイと対談を通してラジオやパーソナリティ自身の魅力を伝えたい。僕がラジオの仕事をしてきた中で得た経験から、ラジオの良さを少しでも伝えられたらと思っています。(「ラジオってなんなんだ?」より)
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