古いバイクは「唯一無二で個性がある」
バイク系YouTuberのねこかずさんは指摘する。
「新車が買えないので中古のバイクを調べていたら、古いバイクの魅力にハマってしまったという人も多いです。それも旧車高騰の要因のひとつだと思います」
ねこかずさんは、約5年前からバイク関連の動画をYouTubeにアップし、チャンネル登録者数16.5万人(2023年4月20日現在)。若者からリターンライダーまで幅広い年齢層から支持を集めるねこかずさんは、旧車の魅力をこう語る。
「現代のバイクは燃費がよく安全性が高いものばかりですが、エンジンやフレームを流用して、コストダウンしているのが見えています。
一方、かつてのバイクはスタイリングが唯一無二で個性があり、バイクにストーリーがあります。例えば、1980年代に一世を風靡したヤマハRZは、排気ガス規制の厳しい日本では二度と販売されないと思いますが、“ナナハンキラー”と呼ばれていました。
当時、国内で販売される二輪の最大排気量はナナハンでしたが、250ccのヤマハRZがナナハンよりも速かった。そういう伝説やエピソードを聞くと、萌えますよね(笑)。
また、1980年代はレーサーレプリカがブームでしたが、日本が豊かで本当にお金をかけてマシン開発をすることができました。
アルミフレームを贅沢に一個一個つくっていますし、エンジンやブレーキなどもレースで培った最先端の技術を全部突っ込めという意気込みで、市販モデルも予算を気にせずに開発していました。
レースに勝つために本気でマシンをつくるぞというメーカーの熱い意志が伝わってきていたんです。そういうところに、今の若い人も魅かれているんだと思います」
性能に関しても、各メーカーが資金をかけて開発した1980〜1990年代のバイクは現代のマシンに負けていないと、渡部さんが語っている。
「当時のレーサーレプリカは各メーカーが開発競争を繰り広げ、毎年のようにモデルチェンジをしています。そんなことは今では考えられません。
カウル(風防外装パーツ)がついているバイクに関しては、今のモデルと遜色ないどころか、当時のほうが性能も上です。そこも旧車が人気になっている理由でしょう」
コロナ禍の需要拡大、物資不足による新車の生産遅延に加え、自動車と同様に“投機マネー”の流入も旧車の価格を高騰させる大きな要因になっているようだ。
前出のメカニック、田邉さんは言う。
「最近、高額の古いバイクを購入する方はバイク乗りというよりも、コレクターが多いという印象です。
購入いただいた高いバイクを持っていったら、ガレージに大量の古いバイクやクルマが並んでいたというケースもありました。もはや骨董品や美術品を買うような感じになっています」
旧車の人気車種は高騰し、もはやバイク好きが簡単には手を出せないような価格になっている。「それでも買う価値はある」とねこかずさんは語っている。
「例えば、カワサキのカウルのないネイキッドタイプのバリオス(1991年発売)やゼファー(1989年発売)などは、10年前には5〜10万円で購入できました。そうすると原チャリを買うような感覚で気軽に乗ることができました。
ですが最近はバリオスが50万円以上、ゼファーは100万円をはるかに超える価格になっています。若者が購入するのはなかなか難しいと思いますが、旧車の人気車種はリセールバリューが高いんです。
1980年代前半に発売されたホンダのCBX400F(新車価格約50万円)を300万で購入したとします。それを何年か乗った後にでも、おそらくそのまま300万円で売れるでしょう。購入価格よりも高く売れる場合もあると思います」
後編では、カワサキZ1やホンダCBX1000Fなどプレミア価格がついている旧車を所有している男性とバイク業者に、クラシックバイクの魅力や購入時の注意点などを聞く。
取材・文/川原田 剛
撮影/村上庄吾、五十嵐和博