野党は「この流れの中で解散されてしまっては太刀打ちできない」

そもそも、どうして早期解散論が浮上しているのか。
1つは怪文書にもある通り、岸田政権の支持率が回復傾向にあるためだ。

日経新聞とテレビ東京が3月24日から26日にかけて実施した世論調査では、内閣支持率は48%で2月の前回調査から5ポイント上昇。一方で不支持率は44%となり、7カ月ぶりに支持が不支持を上回った。

要因としては韓国の尹錫悦大統領が徴用工問題の解決策を発表して、訪日するなど日韓関係が改善に向かっているほか、岸田首相が3月21日にインドを外遊している途中に電撃でウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談するといった、外交成果が世論に影響を与えたとみられる。

「解散じゃありませんね?」公明・山口代表もけん制した“3月超早期解散”仰天怪文書の中身と岸田首相が企む“本当の解散時期”_2
ゼレンスキー大統領と会談した岸田首相(本人フェイスブックより)

日韓首脳会談の後 、5月に開かれるG7広島サミットに尹大統領を招待することを発表し、ウクライナ訪問でもゼレンスキー大統領がサミットにオンラインで参加することを表明した。どちらの会談もG7広島サミットへの布石となっており、これからサミットに向けて国民の関心が高まっていくことを考えると、今の岸田政権の支持率上昇傾向は、今後も続いていく可能性がある。

自民党が去年の参院選で議席を伸ばし勝利してからは、岸田政権は2025年まで国政選挙をやらなくても済む「黄金の3年」を手に入れたため、解散はせずに腰を据えて政策に取り組むのではないかと見られていた。

一方で、岸田首相の自民党総裁任期は来年9月までであり、そのときに岸田政権の支持率が低かった場合は、その後の総選挙に向けて総理総裁の座から引きずり降ろされる可能性もある。
そのため、岸田首相が長期政権を目指すならば、G7広島サミットで自身のレガシーを残し、支持率が上がったタイミングで「黄金の3年」をかなぐり捨てて、早期に解散に打って出るのではないかという観測もずっとささやかれていた。
近ごろは内閣支持率上昇により、後者の想定が永田町で強まっているわけである。

政権と対峙する野党関係者は「外交日程の組み方がうまく、サミットまで一本の筋が通っている感じがある。この流れの中で解散されてしまっては太刀打ちできない」と苦々しく語った。