大手メディアが強調する金融緩和の「副作用」
3月10日、参議院本会議で新たな日本銀行総裁及び副総裁人事案が同意された。10年間続けられてきた異次元の金融緩和は、昨今の円安や物価高の原因であるとされ、金融緩和悪玉論が流布している。
金融緩和を止めて金利を引き上げれば、円安や物価高から解放される、金融緩和を止めることが唯一の有効な円安・物価高対策であるかのような論調も勢いを増してきている。そうした中で、今回の日銀総裁等の人事は、金融政策の転換につながるのではないかと、ある種の「期待」を持って見られている。
おりしも同じ日に、日銀の金融政策決定会合において、これまでの大規模な金融緩和の維持が、現総裁、つまり黒田総裁以下、両副総裁、全審議委員の全委員一致で決定された。これについても大手メディアの論調は否定的なものが多く見られ、金融緩和の「副作用」が強調されている。
しかし、本当に金融緩和が円高や物価高の原因であり、悪玉なのだろうか? 結論から言えば、その考え方は間違いであり、あまりにも乱暴な考え方である。そしてそうした考え方が罷り通ってしまえば、金融政策はおろか、経済・財政に関する誤った考え方までもが日本国内に蔓延し続けることになりかねず、日本の衰退を加速化することにつながりかねない。
そこで本稿ではそうした金融緩和、異次元の金融緩和を巡る「嘘」や「間違い」、事実誤認について批判的に解説したい。