なぜ、娘は使用済みナプキンを平気で放置するのか? その理由は「思春期脳」にあった!はこちら
思春期脳は興奮しやすいようにできている
思春期には性ホルモンの血中濃度が急激に高まり、体の変化を引き起こすことはよく知られていますが、脳にも影響するんですよ。
中でも恐れや怒りをつかさどる扁桃体に強く作用するんですね。扁桃体は、いわゆる〝古い脳〞にあり、すべての脊せき椎動物に備わっています。天敵に出会ったときに「闘うか、逃げるか(Fight or Flight)」という生存に関わる状況判断に関係する部位で、思春期にはこの扁桃体が過剰なほど活性化し、性ホルモンやアドレナリンに敏感に反応します。そのため、思春期の脳は常に興奮しやすい状態にあるわけです。
特に思春期を迎えた男子では、男性ホルモンのテストステロンがそれまでの30倍に跳ね上がるため、脳は常に臨戦態勢。「闘うか、逃げるか」といつも警戒していて、意に沿わない言葉が放たれると、反射的に食ってかかるか、逃げ出すかという行動をとりがちです。
一方、思春期女子の攻撃性は行動よりも言葉に現れます。これは脳のつながり方の違いが関係していて、左脳の前頭葉と側頭葉にまたがる言語中枢と意思決定に関わる前頭葉は、13歳時点では女子のほうが密接につながっているという研究もあるように、10代では一般に女子のほうが男子より言語能力が高く、口が立つのです。男子は言葉で表現するのが苦手なぶん行動に現れ、モノに当たりやすいですね。思春期男子の部屋の壁には、大抵2つや3つの穴があいてますよ。
女子は男子より言語能力が高いとはいえ、しょせんは思春期の未熟な脳です。きちんと論理立てできず、往々にして、ただの屁理屈になってしまいがちです。ですから思春期の女子が生意気なクチをきいても、〝ああ、今、このコの脳の中では、扁桃体が感じている不安をごまかすために、未熟な前頭葉に一生懸命もっともらしい理屈をこねさせているのだなあ〞と理解していただきたいと思います。
頭にきても、決して頭ごなしに「ノー」を突きつけたりしないでくださいね。思春期の過敏な扁桃体はすぐさま戦闘準備に入り、さらなるバトルを招くのは必至です。特に、母娘は口が立つ女性同士、火がつくと収拾がつかないところまで行きがちです。
売り言葉を買ってしまいそうなときは、まずはひと呼吸置き、〝見た目は大きくても中身はちっちゃいコドモ〞と心の中でマントラのように唱えて。冷静に冷静に。
文/大下隆司 写真/pixta