日本の住宅ローンは「個人を見ていない」

「私はもともと都内で働いていたのですが、結婚を機に妻の故郷である秋田県に移住し、そこで不動産・建築会社を設立しました。しかし、そこでは所得や貯蓄額といったさまざまな要因で、住宅ローンの審査が通らないお客様が非常に多かったのです」(森さん)

マイホームを建てたいと訪れた客と打ち合わせをしても、いざスタートという段階で住宅ローンの壁に阻まれ夢を断念してしまうケースを、森さんは過去に何度も見てきたそうだ。

「会社としては、集客・接客コストをかけたのに契約に結びつかないし、お客様も『自分は住宅ローンに通らない人間なんだ』という精神的ダメージを負ってしまう。この状況をなんとかできないかと考えたのが、『家賃が実る家』なのです」(森さん)

住宅ローンの問題は、なにも地方に限った話ではない。地方か都市部かどうかに関わらず、住宅ローンの審査を通らない人は意外と多い。

「たとえば、一流大学を卒業して大手企業に勤めていても、退職してしまうと、途端に審査に通らなくなってしまいます。また、芸能人の方やスポーツ選手の方は、十分な収入があってもなかなか審査に通らないケースが多い。既存の住宅ローンの審査では、勤め先の企業の信用ばかりを見て、本人のことはあまり見ていないんですよ」(森さん)

「ここ数年は低金利の影響で、銀行が住宅ローンに対してそれほど積極的になっていない印象があります。金利が低いと、銀行が得られる利益も薄くなってしまいますから。そういう面でも、審査が厳しくなっている可能性はあります」(広瀬さん)

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実際、同社がサービスを始めると、住宅ローンで悩みを抱える人からたくさんの反響があった。

「お申し込みいただく人の傾向は大きく分けて3種類あります。1つ目は、フリーランスなどの個人事業主の方。2つ目は、自分の責任ではないのに、信用情報に傷がある方。これはたとえば親の会社の連帯保証人になって会社が倒産したといったパターンなどです。そして3つ目は、ローンを組めるけれど組みたがらない方です」(森さん)

ローンを組めるのに組みたがらないというのは、どういった心境なのだろうか。

「今は社会情勢の変動が激しいので、リスク回避志向が高まっているのではないかと思います。従来だと35年間でローンを組む人が多かったと思いますが、35年間失業せず、身体を壊さずに働き切ると決めるのは、今のご時世ではかなりの自信がなければできないことなのではないでしょうか」(森さん)

今まで当たり前だった住宅ローンの仕組みも、もはや常識とは言えなくなってきたのかもしれない。