家主や管理会社が合鍵を持っていることが多い

――賃貸住宅の鍵は、自分以外にも持っている人がいるのですか。

借主(入居者)のほかに、家主(貸主)か管理会社が持っていることが多いですね。その理由は、災害、事故、事件、病気などで借主と近隣の人に危険が及びかねない有事の際に必要だからです。また、賃貸住宅の所有者は家主であり、鍵を含めて部屋を「貸している」という考え方から、こうした慣習があります。

家主から管理会社が物件の管理を委託されている場合は、管理会社が、「スペアキー」(合鍵)か、「マスターキー」という1本の鍵で複数の部屋の開錠ができるものを保有します。しかし、家主が「自主管理」している場合は、家主だけがどちらかを保有しています。

――ひと昔前のテレビドラマでは、犯罪が起きたマンションやアパートの扉を家主が合鍵で開けるシーンがよくありました。また、外出先で鍵を失くした人が「家主に開けてもらった」という話も耳にします。ですが、近ごろでは社会的にセキュリティへの意識が高まっています。そうしたシステムに変化はないのですか。

システムというよりは、慣習と言えるでしょう。家主が警察に協力するケースはありますが、逆に合鍵を利用して家主が借主の不在時に侵入していた、ということもあります。下着泥棒を捕まえたら、犯人は家主の息子や管理会社の社員だった、という事件もありましたが、報道されない、または事件として表面化していないケースも多々あります。

そのため、近ごろの新築マンションや住宅の家主、管理会社が「合鍵は持たない」とするケースも増えていますが、全体としてはまだ少数です。

築年数が20年以上の賃貸住宅の数のほうが全体のなかで圧倒的に多く、また最近の新築物件であっても、とくに学生や若い世代、単身者向きのマンションでは、家主や管理会社が合鍵を保有するケースはまだまだ大変多いのが実情です。