過酷な戦車運用

〈ロシア侵攻から1年〉防戦一方ウクライナ。反転攻勢のカギを握る戦車「レオパルト2」は間に合うのか?_2

ただ、戦車の乗務員にはその破壊力に見合うだけの操縦や射撃スキルに加え、歩兵とは比べようもないほどの過酷さが要求される。著者は過去にオーストラリア陸軍の砂漠での軍事演習に同行取材し、レオパルト戦車1に1週間ほど乗り込んだことがある。

戦車は敵の航空機から身を守るために昼間はブッシュに潜み、夜間に前進する。もっぱら通信兵用の狭いシートで過ごしたが、狭さに耐えかねてハッチから体を出すと戦車の縦横無尽な走りで揺さぶられ、肋骨あたりに無数の青あざができた。

それで砂塵を防ごうとハッチを閉めると、今度は車体と砲塔が全く別の動きをするために方向感覚を失い、自分が前を向いているのか横を向いているのかわからなくなった。

戦車内は轟音が響き、乗務員は全員ヘッドセットを装着しないといけない。また昼間の車内温度は軽く50度を超えるため、氷嚢が不可欠だ。体を休めるスペースもなく、睡眠は砲塔を横にしてエンジンの上の平坦な車体上で雑魚寝するほかなかった。

ある時、エンジンフィルターに砂塵が入って戦車がオーバーヒートし、砂漠のど真ん中でエンジンをジャッキで吊り上げ、新しいエンジンと交換するということがあった。

「戦車にとってこういうトラブルが一番危ない時なんだ」

戦車長のそんなつぶやきを聞きながら、演習ですらこれほどの過酷な運用を強いられる戦車兵の大変さを思い知ったものだった。