「信用できない」暴力団が語る中国人を使うリスク
「ひと昔前になるが、暴力団でも自分たちの手を汚すことはせず、情報屋のような中国人を呼んで『人を殺せるやつを探してくれ』と頼んでいた」(Y氏)
依頼された中国人は、数日後には食うに困っているヤツを連れてきた。だいたいが不法滞在か密入国してきたような者だったという。
中国人コミュニティの結束やつながりは、日本人にはわからないほど特殊で密だといわれていた。密入国者などの情報も仲間内では共有されていたのだろうが、その情報が中国人ネットワークの外部に漏れることはほとんどなかった。
犯行に使う拳銃は暴力団側が用意する。狙うターゲットを教え、場所を指定し拳銃を渡せば、雇われた中国人は金欲しさに実行する。成功すれば数十万円程度の報酬と飛行機のチケットを渡し、成田空港で見送ればそれで終わりだ。
「実行犯はすぐに国に帰す。狙った相手や組織に、自分らがやらせたとわからせればいい」と考えていた暴力団だが、Y氏いわく、逃走中に警察に捕まったり、帰国せずに捕まった中国人は、いとも簡単に暴力団の関与を警察にしゃべってしまうためリスクは高かったという。
「金で人を殺すような中国人は口が軽い。口止め料を支払ったとしても、捕まれば自分の罪をなんとか軽くしようと何でもしゃべる。しゃべられたら自分らが捕まるから、暴力団は中国人を使わなくなった」
タタキのような仕事でも、中国人を使うリスクについてY氏は続ける。
「日本人でもギャンブルで金が回らなくなったヤツや闇金に借金があるような者は、金になればタタキもやる。日本人は暴力団がどれだけ怖いか知っているから、特殊詐欺の受け子や出し子で使っても、その金を持ち逃げすることはない。
中国人はタタキの仕事で窃盗をやらせると、盗んだ金品を平気でパクる。パクってもヤツらは正直に白状しない。そのまま国に逃げられたら取り返せないから信用できない」
金に困っていた中国人らを使ったのは、2000年代前後から勢力を伸ばした半グレ組織などの中国人犯罪グループだ。飲み込まれていったのは、主に学生ビザで来日した中国人留学生である。
当時の状況を暴力団幹部のX氏は振り返る。
「日本で知り合った仲間の紹介などで、中国人犯罪グループなどと知り合い、彼らのシノギを間近で見るうちに考え方が変わるんだ。
自分は中華料理店で汗水流して体はクタクタになって働いても稼ぎは数千円。日本語も勉強しなればならないし、学費や来日にかかった借金も返済しなければならない。だが一方は大金を持ち遊んでいる。
中国人には金が持っている者が強い、偉いという思想が根強い。どうすればそうなれるのかと聞けば、楽に稼げる仕事があると誘われ、誘惑に乗ってしまう」